日本ハム時代は選手と「友達」のような関係に。家族で交流していた(ライブリー提供)
エンゼルスの広報担当者にも水原の事件について取材をしたいと伝えると、担当者はこう答えた。
「裁判が進行中で、デリケートなことなのでコメントを控えさせてもらう。エンゼルスの関係者への取材も止めてほしい」
2月6日に水原に量刑が言い渡された後、私は担当者に再度メールで取材を申し込んだが、返信の内容はこうだった。
「この件については球団からのコメントを控えたい」
ネビンと会う前には、水原が入団した当時のマイク・ソーシア元監督(66)のもとも訪れたが、「一平とは半年しか一緒にいなかったから、知らない」と言葉少なに語るだけだった。
騒動発覚から1年。取材を続けたこの間、水原の関係者たちから同じ言葉を何度受けただろう。
「デリケートな問題なので……」
この裏には、目に見えない無言の圧力が働いているかのように感じられた。その空気感こそが、事件の真相を覆い隠しているのではなかろうか。
水原は3月24日までに出頭し、刑務所に収監される予定だ。彼が今後また新たな事実を語る日は来るのか。事件はまだ、終わっていない。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
水谷竹秀(みずたに・たけひで)/ノンフィクションライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年、「日本を捨てた男たち」で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。最新刊は『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館新書)。10年超のフィリピン滞在歴をもとに「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材。ウクライナ戦争勃発直後から現地で取材していた。
※週刊ポスト2025年3月21日号