原宿駅を降りてすぐに見える「竹下通り」(時事通信フォト)
香港には、観光地にもなっている市場の一角に有名ブランド品のコピー商品がずらりと並び、偽物を値切って買うのを面白がる観光名所のようになっている俗に偽物市場と呼ばれる場所がある。もちろん権利侵害は認められないので、香港税関は適宜、取締りや摘発を行っているが、いっこうに偽物市場はなくならない。表も裏も混在する香港らしい有り様だと思うかもしれないが、日本にも似たような地域が存在する。ライターの森鷹久氏が、東京の原宿駅前から伸びる竹下通りでのコピー商品販売についてレポートする。
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「数年ごとに摘発が繰り返されており、その都度騒ぎになって、マスコミが取材しに来たりしますが、何度も見てきた光景です。何しろ、私がもっと若かった数十年前にも同じような人たちが商売していたし、もはや、原宿・竹下通りの”風物詩”ですよ」
半ばあきれ気味にこう話すのは、竹下通りで長年飲食店を経営する男性店主。「原宿の風物詩」とまで言い切った出来事とは、すぐ近くの衣料品店の50代の経営者と40代の従業員が、海外人気ブランド品の偽物を販売したとして逮捕された件だ。今回、摘発された偽ブランド品には、2025年開幕戦を日本で行って注目を集めていた米大リーグ・ドジャースのロゴが入ったキャップが含まれていた。呆れた口調の飲食店店主は、原宿での偽物販売には、賑やかになるシーズンがあるのだと続ける。
「毎年、新入学の学生さんが上京して原宿にくるこれからの時期(春休み)、あとはもちろん夏休み。お年玉を持った子供が多い正月なんかは、このあたりに外国人が数人並んでね。摘発されてもいつの間にかまた店が出来ていて、違う外国人がまた通りで子供をターゲットに違法な”キャッチ”をやるんだよ。毎回逮捕されるし、その都度テレビカメラがきて騒ぎになるんだけど。なんだか、イタチごっこだよねえ」(竹下通りの飲食店店主)
「ヘイアニキ!アニキ!何探してる?」
若い観光客で溢れかえる、東京・原宿の竹下通り。クレープ屋やアイドルのブロマイド屋が流行したのは今から30年以上前かもしれないが、その後も、その時代の流行を追いかける若者たちに支持され続け、24時間365日、若者がいない日はない、という街だ。だからこそ、憧れの原宿には全国から若者が押し寄せ、その中には、あまり原宿の事情がわからずに浮かれ立っている子供もいる。そんな子供が違法コピー品業者にとってのターゲットだ。筆者も昨年、原宿の某店を訪ねたばかりであった。
「ヘイアニキ!アニキ!何探してる?ナイキ?シュプリム?ジョーダン?」