押収された米国の人気ブランド「ステューシー」の偽のTシャツや帽子。2014年5月(時事通信フォト)
竹下通りのど真ん中。今では珍しいくらいベタすぎる派手な「ヒップホップ系」ファッションに身を包み、まだ幼さの残る制服姿の男子中学生二人組の腕を掴んでいたのは、身長190センチ近い、大柄の黒人男性。筆者が見ているその目の前で、男子中学生たちは通りから一本入った、衣料品店に連れ込まれた。筆者も別の黒人男性「キャッチ」にわざと引っかかり、同じ店舗になんとか潜入した。
店内に入り、まず目に入ったのは、今や女性や子供まであらゆる世代に人気の「ニューエラ」のロゴが記されたベースボールキャップ。キャッチの黒人男性の服装と同じような、派手な色合いのヒップホップ系アイテムも目立つが、よく見ると、高級ブランド「ルイ・ヴィトン」のロゴ入りTシャツや、若者に人気の「バレンシアガ」のパーカーなど、中高生には敷居の高そうなハイブランドのアイテムまで揃っている。
「アニキ、これ2つ5千。2つ8千。3つ1万なら一番得」
大柄な黒人男性は、先ほどの男子中学生に、人気ブランド「シュプリーム」のロゴが記されたTシャツを売りつけようとしていたが、もちろんそれらは真っ赤な偽物である。
複数の大手メディアが「偽物が販売されているらしい」と取材していることを知り、様子を見ようとやってきたこの店舗。筆者についた黒人男性もまた、男子中学生へと同様、私に猛烈な勢いで「アニキ、これ、かなりいい、人気」といって、バレンシアガのパーカーを押し付けてきた。タグはついているようだが、値段もブランド名もない。値段を聞くと「3万」だというから「高い、そんなお金ない」というと「いくら持ってる」と目つきが変わる。
筆者は事前に把握していたが、彼らの店では、カード決済ができないことが多い。それは、偽物を扱う非合法店なのでカード決済の資格審査を受けたくないという事情もあるだろうが、とにかく現金を確保したいという本音があるからだ。質の悪い「偽物」の最終的な処分地である店舗では、最後は投げ売りに近い価格でもとにかく「現金化」することが、キャッチの大柄男性たちの「至上命題」となっている。だからこそ、それほど多くなくとも数万円の「現金」を持っているであろう、明らかに観光でやってきているであろう、買い物に不慣れな子供をターゲットにする。筆者は店員に「カードしかない、現金は1000円しかないよ。ところで、ここで売っているのは本物?偽物でしょう」などと、特に、中学生諸君に聞こえるように言い放ってみた。
「お前死ぬ、お前死ぬ」
パーカーを筆者に押し付けていた黒人男性の血相が変わり、このように脅されながら、強引に体を押され店を追い出されたが、直後に男子中学生2人も店から出てきて、なんとか騙されずにすんだようだ。