『K2』の表紙にも使われている山頂直下の写真。「何だろう?」とシャッターを切った
白い。全体的な写真の色彩が、だ。空気中の埃までもが写っているような感じさえする。石川直樹の写真集『K2』の第一印象である。
石川が説明する。
「SNSとかのギラッとした写真に見慣れているから、かな。ネガからプリントすると、多少はふわっとした空気感が出るかもしれませんね」
写真家・石川の愛機は中判フィルム用のカメラだ。中判とは通常よりも大きなフィルムのことで、引き延ばしたときに粒子が粗くならないなどのメリットがある。
石川は2024年10月、シシャパンマ(8027メートル)のピークに立ち、23年がかりで世界の8000メートル峰全14座登頂を果たした。
今回、石川が写真集にまとめたK2(8611メートル)は、その14座のうちの1つで、登頂が困難なことから「非情の山」の異名を持つ。2022年7月、石川が3度目のトライにてようやく頂に到達した山でもある。
現在、全14座完登者は世界に40人以上いるとされている。したがって、石川の記録に特筆すべき点はないように思える。ところが、石川は世界に例を見ない「奇行」を成し遂げた。