偶然、テントから顔を出したシェルパ。この写真もシャッターを切ったのは1度だけ
自意識を極限まで削いだ石川の写真の魅力をあえて言葉にするなら「ありのまま感」である。
それにしても気になるのはお金のことだ。8000メートル峰の登山は1つの山行につき200万から300万円はかかる。
「半分が自腹で、半分はスポンサーとかから出してもらっています。今は相当、きついですよ。でもこれまでの登山でも写真が売れたり、展覧会をやったりしているうちに10年後に10倍ぐらいの価値になって戻ってくる感覚があるんですよ」
その確信には、8000メートル峰のありのままの世界を連れてきた写真に対する自負が滲み出ていた。
【プロフィール】
石川直樹(いしかわ・なおき)/1977年生まれ、東京都出身。写真集に『CORONA』(土門拳賞)、『EVEREST』、『まれびと』(日本写真協会賞作家賞)、著書に『最後の冒険家』(開高健ノンフィクション賞)など多数。『K2 Naoki Ishikawa』(小学館)が好評発売中。
写真/石川直樹 取材・文/中村 計
※週刊ポスト2025年3月28日・4月4日号