今季のスローガン「どらポジ」を掲げる中日・井上一樹監督(時事通信フォト)
新シーズン開幕を迎えた中日ドラゴンズ。今季は井上新監督のもと「劇的復活」を果たす1年となる。そんなドラゴンズを溺愛する拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が、ドラファンと中京人メンタリティの関係性について新著『人生で残酷なことはドラゴンズに教えられた』で言及している。シリーズ第5回では、「元祖ミスタードラゴンズ」高木守道のニックネームに象徴される、中日ファンの「奇妙な謙虚さ」を紹介する(シリーズ第5回。第1回から読む)。
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冷たい、といえば思い出すのが、元祖・板東英二の「燃えよドラゴンズ!」の歌詞だ。「一番高木が塁に出てー」って歌い出し。
引っかかるのは、「高木が塁に出る」って歌詞。フォアボール? いや、デッドボール? たしかに出塁率は高かったけど、好打者だよ、ミスタードラゴンズは。
「ヒットで出塁」としない理由が分からない。言うだけならタダなのに。ひょっとして、妙な遠慮が働いたのかな。そういうところが中京地方の人にはある。
思い当たること(関係ないかもしれないが)を書いておこう。私の地元の話だ。
私は東京では名古屋出身と言っているが、正確には愛知県の長久手市の出身だ。だから、東京で名古屋出身者と会うとたまに気まずい思いをする。
「えっ、名古屋のどこ?」
「あっ、長久手」
そういうやり取りの後に、相手はかなり高い確率で「……」と、裏口入学者を見るような目になって、テンションを下げる。
まあ、ド田舎だったから仕方がない。小牧・長久手の戦いと教科書の隅に書かれてた長久手町だ。合戦ができるような場所だ。アーバンじゃない。愛知県だけど愛知郡。「大字」も「小字」もついていた。友だちの家に遊びに行けば、けっこうな確率でトイレは家の外にあった。
子供の頃は名古屋のベッドタウンという程度にしか認識していなかったが、考えてみれば地名はかなり個性的だ。
駄菓子屋が2軒あってまあまあにぎわっていた通りには「首塚」があったし、「血の池」にはしょっちゅう鮒を釣りに行った。どちらの地名も、子供には単なる「ク・ビ・ヅ・カ」と「チ・ノ・イ・ケ」という音でしかなく、禍々しい印象なんて持ったことはなかった。この程度の地名は「銀座商店街」くらい日本中にあると思っていた。
だが、東京で口にするとドン引かれる。