電話番号が「非表示」や海外からであれば警戒するが(写真提供/イメージマート)
警察を騙る詐欺電話がかかってきた、という報道が続いている。警察官のふりをするだけでなく、着信した側で表示される電話番号が、実在の警察署の代表番号なのだ。生活を便利にするために生み出された技術が悪用されている現実と、将来、予見される不穏な可能性について、ライターの宮添優氏がレポートする。
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警察署の番号を装った詐欺電話が全国で相次ぎ、福岡市在住の高齢男性が「札幌の警察署」を騙るニセ電話に応じ、約1000万円を奪い取られるなどの被害も出ている。事件を取材する、大手紙警視庁担当記者が解説する。
「一般市民のスマホなどに、主に警察署で利用されている末尾0110で終わる電話番号が表示される着信があり”こちらは警察署だ”とか”あなたは捜査対象者になっている”など、ありもしないことを告げられ、脅されるんです。動揺した市民はニセ警察を信じてしまい、LINEなどの別アプリでやりとりを続け、最終的に多額の金を奪われます」(警視庁担当記者)
電話をかけた際、相手側に表示される自身の番号を「設定できる」という事実が報じられ、驚いた人も多かったかもしれないが、実はこの手法「犯罪的システム」というわけではなく、ある正当な理由のために開発された「技術」でもあるという。大規模なコールセンターで現役のスーパーバイザーをつとめる男性社員(50代)は、可能性が高い技術について説明する。
「いわゆる”スプーフィング”という技術で、例えば、コールセンターなどから荷電する際に相手側にこちらの代表番号を表示させるなど、現在も日常的に使われています。この技術を使うことは違法な行為でもなんでもありませんが、見ず知らずの人物や団体になりすますのは、当然御法度です。今回、このような形で報じられると、まともな技術に対しても偽装である、という印象は強くなりそうですね」(コールセンターのスーパーバイザー)
本来の目的のために使われるぶんにはトラブルにはならないが、「なりすまし」や「偽装」のために一部の不届き者たちがスプーフィングを悪用している、というのが実情らしい。今回の件で見過ごせないのは、意図的に警察署の番号を表示させた技術ではなく、その不届き者たちが「警察官」になりすましていることである。前出の大手紙警視庁担当記者が続ける。
「今までも警察になりすますことは簡単に出来たのですが、さすがにリスクが大きすぎると、多くの犯罪者が実践に移してこなかった。警察になりすました犯罪を、警察自身が絶対に許さないということは、犯罪者なら誰でもわかる。彼らとしても、警察の敵と認識されるのは避けたいところでしょう。ところが現在、全国に”ニセ警官”が続出している。これは犯人たちが、日本の警察や司法権限が及ばない海外にいる可能性が高いことを示しています」(警視庁担当記者)