仲の良い4人。どこにでもある家族だった
同い年の妻、邦子さんとの出会いは大学生の頃だった。千葉大学の教育学部、ふたりは同じ研究室に在籍していた。
「たぶん、運命だったんでしょうね。同じ年の生まれで、誕生日も一日違いです」(小山さん。以下同)
ふたりは卒業後、同じように小学校の教員になった。そして、同じように惹かれ合い、当たり前のように結婚した。
「30代の半ばまで、邦子も教員を続けたのですが、授かった子どもがよく熱を出す子で、邦子はその子のめんどうを見るために教師を辞める決断をしました。
子どもが中学生になって、体調もしっかりしてくると、邦子は地域の生協の活動に精力的に参加するようになり、最終的には正職員として会員誌の編集長を務めるまでになりました」
どんなことでもそつなくこなす、頼りになる女性だった。60代でアルツハイマー型認知症の兆候がでてきたときは、「まさか邦子にかぎって」と、始めは信じることができなかった。アルツハイマー型認知症は認知症全体の約7割を占めるもので、高齢者に多い病気だが、64歳以下で発症すると「若年性」とされる。
「医大で脳の画像を見せられ、患部の萎縮を確認したときは、やっぱりそうなのか、と思い知るしかありませんでした」
俳句に親しみ、小学校や介護施設、社会人サークルなどで講師を務める小山さんは、妻への思いを17文字に込めて詠みはじめた。以下、『大花野』に掲載された句を紹介しながら、その時の状況を小山さんに語ってもらった。