症状が出始めても、2人でよく出かけた
【つい怒鳴る虐待に違ひなき暮】
「一生支える、なんて自分で決めておいたくせに。きれいごとだけで何とかなるものじゃないってことも思い知った。ヘルパーさんの訪問や、デイサービスは、邦子が嫌がるので避けていたけれど、介護保険サービスも少しずつ使うようになっていきました」
それでも、小山さんが妻を支えていることに変わりはない。
邦子さんに認知症の症状が出はじめたちょうどその頃、夫婦は自宅を改築し、『街の台所』と命名して、月に一度の食事会を企画した。やりたいといい出したのは邦子さんだ。こうした社会的な活動にも積極的な人なのである。
「お年寄りを対象に、定期的に集まっていただく計画です。地域のコミュニティを作るのが目的でした。邦子も始めのうちは張り切ってやっていました。でも、だんだんとできないことが増えていくんです」
(後編に続く)
◆取材・文/末並俊司(ジャーナリスト)