レビー小体型認知症が出始めたころ デイサービスにも通い始めた

レビー小体型認知症が出始めたころ デイサービスにも通い始めた

 慌てて探しに出ました。邦子が出かけてからどのくらい経っているのかわからない。もしかしたら、どこか遠くまで行ってしまっているかもしれない。恐ろしくてたまらなかった。だけど家を出て、角をひとつ曲がると、向こうからやってくる邦子の姿が見えた」

 大げさのように聞こえるかもしれないが、小山さんはこれを「奇跡」だという。

「だって、道は先に行けばいくほど、幾重にも別れて、どんどん広がっていって、角ひとつ間違えると一生会えないかもしれないんですよ。それなのに、邦子はどこまで行ったのかわからないけど、ちゃんと帰ってきてくれた」

 しかし、こうした「事件」が増えてくると、自宅での生活は危うい。3年ほど前、小山さんは妻を認知症グループホームに入居させることを決心した。

「症状はその後も進行し、今ではベッドから起き上がることも減りました。それでも、邦子がいてくれるおかげで、私は今でも幸せだし、邦子が病気になったことで成長させてもらったと感じています。きれいごとだけじゃないし、これからも大変なことがあるかもしれないけれど、邦子との人生はまだ続きます」

【ここはどこあなたはだあれ大花野】

 大花野(おおはなの)は秋の季語だ。野に草花が生い茂げる様子だが、季節は秋だ。これから冬がやってくる。小山さんの今現在の偽らない気持ちだ。

彼は、今も定期的に介護施設で利用者を相手にした、俳句の講義を行っている。妻・邦子さんとの日々の経験が、小山さんをそうした活動に駆り立てる。その集大成とも言えるのが『大花野』だ。現在、邦子さんは認知症グループホームで生活している。面会に行くたびに、新たな発見があるという。『大花野』の続編出版も近いのかもしれない。

◆取材・文/末並俊司(ジャーナリスト)

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走 “一管理職の職責を超える\"心労も
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
【女占い師が逮捕】どうやって信者を支配したのか、明らかになった手口 信者のLINEに起きた異変「いつからか本人とは思えない文面になっていた」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン