人が多く行き交うターミナル駅とその周辺は「ぶつかり男」が出現する(写真提供/イメージマート)
混雑している駅などで、女性や、ときに小柄な男性に対してわざとぶつかってくる人がいるとSNSへ投稿が相次いだとき、ぶつかる人の多くが中年男性であることから「ぶつかり男」「ぶつかりおじさん」などと呼ばれるようになって数年が経っている。新型コロナウイルス感染症が拡大し、外出が自粛されていた期間にはさすがに姿を消したが、日常を取り戻し始めた途端に、再びあらわれたとSNSでは各地から報告された。ところが最近、「ぶつかり男」の出現に変化が起きているという。ライターの森鷹久氏が、訪日観光客の増加とともに生態を変えつつある「ぶつかり男」についてレポートする。
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日本の恥と言うべき、女性をターゲットにした「ぶつかり男」。全国各地で似たような事件が発生するなか、先日、福岡市内で女性を狙った「カバンぶつけ男」の存在が一部マスコミで報じられ話題になった。ところが、「ぶつかり男」そのものについては目撃談や被害申告が減少傾向にあると、複数の被害者やウォッチャーから、筆者のもとに情報が寄せられている。本当だとしたらその原因はなんなのか?
強気な外国人女性から詰め寄られ
「ちょうど、うちの店の入口から見えるあたりで、毎回、通行人にぶつかりに行っては叫び声をあげたりしてトラブルを起こす日本人の中年男がいました。ひどい時は毎日のようにトラブルを起こし、警察が来たり、駅員が来たりしていましたが”あの件”があって以降、パタリと姿を見なくなりました」
頻繁に「ぶつかり男」が見えていたという場所を指さしながら話すのは、東京・新橋の地下商店街で居酒屋を営む男性(60代)。新橋駅から南方向に伸びる地下街は、朝夕のラッシュ時には大量の通行客で混雑し、ほとんど毎日のように「当たった」「当たっていない」といったトラブルが発生していた。特にこの10年ほどは、混雑の中で、わざと女性通行人に当たっていく男性が目につくようになったという。しかし、コロナ禍を経て、外国から日本にやってくる「インバウンド客」が増えるとともに、卑劣な「ぶつかり男」たちは、その姿をくらませつつあるとも話す。
「半年前でしたよ、例の”ぶつかり男”がまた揉めていたんですが、相手は、中国か台湾から観光に来た女性客のようで、ものすごい剣幕で”痛い”とか”謝れ”とぶつかり男を追及していました。観光客は2人組でしたが、一人がスマホで撮影しつつ、もう一人がぶつかり男をたどたどしい日本語で追及する、という感じ。相手が日本人女性なら強気に出るぶつかり男も、言葉が通じず、さらに強気な外国人女性から詰め寄られ、あわあわしながらも、最後は中指を立てて男は去っていきました。正直、スカッとしましたよ。情けない男だなと」(新橋の居酒屋店主)