いま、渋谷で「ぶつかり男」に遭遇することはほぼないという(写真提供/イメージマート)
新橋といえば、サラーリマンの街として有名であり、駅北側に所狭しと並ぶ庶民の懐にやさしい飲み屋街などが日本人の一般的なイメージだろう。一方、駅南の汐留方面には外資系の高級ホテルが連なっている。乗り換えが多いターミナル駅でもあるため外国人観光客の姿を見ない日はない。ぶつかり男は、そんな事情を知ってか知らずか、新橋で「ぶつかり」を繰り返していたが、外国人女性客に思わぬ「反撃」をくらい、退散したのだという。最近は「ぶつかり」が多発するスポット、時間帯に警備員が立つようになったらしいが、混雑時の些細なトラブルはあれど、卑劣な「ぶつかり男」の姿は見られなくなっている。
「なんだオラ!」って言っちゃう
もともと「ぶつかり男」は反撃にめっぽう弱い、と以前の取材で聞いていた。それは、池袋や新宿などには出没してきた「ぶつかり男」が、若者が多く集まり混雑する渋谷や原宿、夜の六本木など、ぶつかり男にとって「格好のターゲットになりうる街」のはずなのに、なぜかその姿が目撃されないという事実は、筆者の取材でも簡単に裏付けられた。当時取材した、渋谷区内のアパレル店従業員の女性(30代)は「今でも渋谷と六本木は安全」と断言する。
「ぶつかり男ってニュースになってたけど、渋谷とか原宿とか、若くて元気な女性がいるところには来ないんですよ、ウチらがやられても”なんだオラ!”って言っちゃうから(笑)。昔、靴の先に針を仕込んだ男が渋谷に出没して、若い女性にケリを入れて怪我をさせる事件がありましたが、あれ以来、ぶつかり男的なキモいやつの話は聞かないです!」(アパレル店従業員の女性)
確かに、年中混雑している渋谷や原宿では、なぜか「ぶつかり男」の被害を訴える声が少ない。女性はその理由について「言い返す被害女性」の存在を上げる。深夜、そして早朝の六本木に行くと「ぶつかり男」など聞いたことがない、という日本人女性の証言しか得られなかったが、早朝の六本木交差点で出会ったドイツ人女性(20代、身長170センチ超え)が、日本の「ぶつかり男」について体験談を含めた持論を話してくれた。
「日本はどこも混んでいて歩くのが怖い。日本人は優しいから大丈夫ですが、意地悪な男もいて、ドンと私にくる(ぶつかってくる)。どうしましたか?と言っても、邪魔とか、ふん、とか言って目も合わせない。こんなこと、ドイツでもヨーロッパでもあり得ないですが、日本はイライラした男性が多いですね。小さい男性だと、私にぶつかってきても自分で倒れて、そのまま何も言わず、あっちに行ってしまう人もいました。リュックを引っ掛けてくる男性もいますよ。私は体が大きいですが、体の小さい、特に日本の女性は大変でしょう」(六本木のドイツ人女性)