「ぶつかり男」は外圧で消滅するのか(写真提供/イメージマート)
「ぶつかり男、観念しろ!」
筆者はこれまで幾度も「ぶつかり男」について取材してきた。渋谷ではもともと少なかったので変わらないが、被害の声が多かった新橋では減少しているというのが最近の変化だ。では、ぶつかられたという報告がやはり多くあがっていた東京の新宿、池袋ではどうか。改めて取材すると、新橋のように、以前とは少し違う目撃談が複数得られた。池袋駅構内の飲食店で働く女性(30代)が証言する。
「以前から池袋駅ではぶつかり男が出る、と噂されていましたが、この半年ほどで、ぶつかり男と外国人女性観光客のトラブルは数回見ました。ぶつかり男と呼ばれる人は、実は体も小さくて強そうには見えないんです。でも相手が自分より身長も低く、体型も小さい女性ならドーンとわざと体を当てに行く。でも、大柄な外国人女性は、ドーンとやられても倒れず、ぶつかった男の方が飛ばされてる(笑)」(池袋駅構内の飲食店で働く女性)
同じような話は、やはり新宿でも聞かれた。新宿駅に繋がる地下街にあるドラッグストアの男性従業員が振り返る。
「外国人女性をターゲットにしたからか、女性と同行していた男性に、すごい勢いで詰められて、ぶつかり男が交番に引き摺られていくのを何度か見ました(笑)。側から見ると、横暴な外国人が日本人に言いがかりをつけている、と見られかねず、思わず私は加勢しましたよ。こいつが”ぶつかり男だ!”と叫んだりして。細身に見える東南アジア系の女の子も、日本人の中年男性にぶつかられたって大騒ぎして、友達っぽい女の子たち数人から囲まれてダッシュで逃げてたこともありますよ」(ドラッグストアの男性従業員)
このようにして、各地に出没していた「ぶつかり男」は、次第にその姿を見せなくなっているようだ。だが、前出の渋谷区内のアパレル店従業員女性は怒りが収まらないという。
「ぶつかり男の何がムカつくって、相手を選んでるからです。だからぶつかられたら、あの男は私をナメてるって感じて余計にムカつく。普通の女の子はそれで終わりだろうけど、ウチらはムカつくで終わんないから!って感じです(笑)。ぶつかられたら大声出すし、追いかけるし、撮影してSNSで晒しますよ。でもそれができない女の子が多かった。外国の女性が『ぶつかり男』に反撃してくれるのはいいけど、日本人女性ももっと声をあげよう、強くなろうと言いたいですね。ぶつかり男なんか、力の弱いものにしか手を出せないクズなんで」(渋谷区内のアパレル店従業員の女性)
日本人は「外圧に弱い」といわれる。日本人だけの議論では収拾がつかないような問題も、外国首脳の一言など、わずかな「外圧」をかけられた途端に態度を変える、などとも国の内外から評される。「ぶつかり男」対策も同様に、インバウンドという外圧によって、ほんの少しだけかもしれないが、進みつつあるのかもしれない。