横須賀市内での牧島氏の「お別れの会」(筆者撮影)
先月半ば、1つの訃報記事に言葉を失った。半年前にロングインタビューをした老政治家の死を告げる12行だった。その1行ずつに目を走らせるうち、ピースの煙を吐きながら彼が何度も発した「そういう話じゃないんだよ」という、ややとんがった口ぶりが耳に蘇ってきた。
3月末、横須賀市内で行われた「お別れの会」には、河野洋平元衆院議長、甘利明元自民党幹事長らが駆けつけ、約1700人が献花の長い列を作った。私もその列に加わった。
三浦半島の東側を南北に走る国道16号のロードサイドに、その男――牧島功の事務所はあった。男が仕えた異能の宰相、小泉純一郎の家とは、その国道を挟んで1キロ弱の距離はあるものの、同じ町内である。
小泉純也、純一郎、進次郎の三代を支えた男
牧島氏は、県議を9期務めた元神奈川県議会議長であると同時に、先代の小泉純也氏(元防衛庁長官)と純一郎氏の秘書を務め、進次郎氏のことは党神奈川県連で支えた、小泉家の“国家老”だった。
旧日本海軍から戦後は海上保安員に転じた船乗りを父に持つ牧島氏は、純一郎氏の弟と同級生だった縁から小泉家の選挙を手伝うようになった。大学卒業後、その書生となり、市議を3期務めたのちに県議に出た。同じ横須賀選挙区で、県議として小泉家の番頭役だった竹内清・英明氏親子とはライバルであり、純一郎氏との間でも緊張が高まった時期もある。
2023年4月の統一地方選に不出馬を表明するまで、県議選の横須賀選挙区では、牧島氏と竹内家は1位、2位で火花を散らした。そんな緊張感が、進次郎氏の陣営の筋肉質な足場となっているようにも見える。
私は昨秋、牧島氏に小泉家を目撃してきた歴史の証人と狙いをつけ、空振りも含め4度足を運び、都合5時間超にわたってインタビューした。その間に傘寿を迎えた牧島氏に、小泉家3代のこと、総裁選と総選挙という二度の敗戦となった進次郎氏への叱咤と展望を聞いた。
急に具合が悪くなって中断となった日も、3時間近くにわたって喋りまくる日もあった。私はその話のエッセンスを『週刊ポスト』にインタビューレポートにまとめた(『小泉家の国家老が激白「進次郎君、横須賀に帰りたまえ」』、2024年11月22日号)。が、限られた紙幅には織り込みきれなかったやや毒を帯びた弁舌がこれまた面白く、自民党を評するときに、それは切れ味を増した。