リーダーとしての「地方の名望政治家」

 だからこそ牧島氏は40代の進次郎総裁誕生に期待していたが、総裁選惨敗でその期待はしぼみ、この時は、やや悲壮感を帯びていた。しかも、この取材の約1週間後、石破執行部が非公認の候補者に各2000万円を支給していた事実が報じられ、安倍政治の転換どころか、マンネリ化した政治の茶番に、国民はうんざりさせられることになる。

 ただ、牧島氏の話に、私は机上の空論とは片付けられない説得力を感じたのも確かだった。私は、かつて評論家の西部邁が「地方の名望政治家」に、望まれるリーダーの資質を見出していたのを思い出した(探してみると、沢木耕太郎との対談『所得倍増論と一九六〇年』、文藝春秋2004年10月号だった)。

 角栄の「列島改造」や竹下登の「ふるさと創生」まで、政治のビジョンのそれぞれ美点は認めつつ、西部は「結局、足りなかったのはその局所的なアイデアをバランスをもって統合することです」と述べた。そして「日本にそんな政治家がいたんでしょうか」という沢木の質問には、こう答えている。

「地方の名望政治家にはありえたかもしれませんね。田舎に住んで、土地の名士や学者の意見や奥さんの言い分も、神主の考えも全て吸収しながら生きてきた人のほうが、総合力があったと思う」

 あまりこじつけるつもりはないが、地方の政治家には珍しく、牧島には8冊の著作があり、科学者や宗教家ら、じつに多くの人たちとの対談を楽しむ人でもあった。

 今、石破内閣の支持率は危機的な水準で推移する。他方、小泉進次郎氏は政治改革本部事務局長として「政治と金」をめぐる議論で積極的にメディアに登場している。「ポスト石破」として再び、世代交代の旗頭となる進次郎氏の挑戦の時が遠からずやってくる。論戦の頼りなさが指摘された昨秋からすると、論争の力量も急激に改善しているようにも見える。

 ただ足元では先月、牧島氏の訃報に続き、先代から小泉家に仕えてきた鍋倉正樹秘書も3月に葬儀があったと報じられた。一昨年には牧島氏のライバルだった竹内英明・元県連幹事長もこの世を去っている。時代のバトンが渡される瞬間というものがあるとすれば、牧島氏の死にその一場面を見たように私は思った。(文中一部敬称略)

■取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)

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