個展で展示されている『We The People』(2025)
『Divergence Humble Solitaire』(2024)
『The Fall High』(2023)
2002年、世界同時多発テロがまだ記憶に新しいタイミングで渡米。またしても壁に突き当たる。
「デザイン科の授業が全然面白くないんですよ。アメリカの教育機関は卒業と同時に即戦力として活躍できるようカリキュラムが組まれています。独り立ちするための技法を教えてくれるのかと思いきや、授業内容は“見やすい財務諸表のデザイン”みたいなものばかり。それがダメということではありません。ですが、僕はもっと作家性の強い仕事に興味があった」
そう語る松山だが、大学院は首席で卒業した。
「卒論を書くにあたって、商業デザインの歴史について徹底的に調べたら、成功した人はどこかで画家や作家宣言をしている。クライアントありきではスターになれない。そこで僕も『作家』になると自分自身に宣言したのが、27歳の時でした」
(後編へ続く)
【プロフィール】
松山智一(まつやま・ともかず)/1976年、岐阜県生まれ。現代美術家。2002年、上智大卒業後、ニューヨークへ。アート活動を始め、ペインティングを中心に彫刻やインスタレーションを手がける。世界各地のギャラリーや美術館で個展を開催。5月11日まで個展「松山智一展 FIRST LAST」が麻布台ヒルズ ギャラリースペースにて開催中。
聞き手/末並俊司(ジャーナリスト) 撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2025年4月11日号