放送時間を拡大しているフジテレビの『めざましテレビ』(番組公式HPより)
各局が熾烈な視聴者獲得争いを繰り広げているのが朝の情報番組だ。その中で“8時またぎ”の戦略をとるのが日本テレビ系『ZIP!』と、4月から8月14分まで放送時間を拡大しているフジテレビの『めざましテレビ』だ。同じ“8時またぎ”を意識した編成を行いながら、両局にはどんな戦略の違いがあるのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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今春、フジテレビの『めざましテレビ』が放送時間をこれまでの8時までから8時14分までに拡大。1994年春のスタートから32年目で初の放送時間拡大であり、一見キリのよくない「8時14分」が新番組『サン!シャイン』の開始時間になったことも含め、示唆に富んでいます。
一方、日本テレビの『ZIP!』は2年前の2023年春に放送時間をそれまでの8時までから9時までに60分間拡大。17年間にわたって放送された8時開始の『スッキリ!』を終了させ、9時開始の後番組『Day.Day.』をスタートさせました。
それまではNHK総合も含め「各局の報道・情報番組が8時で終了し、同時に次の番組がはじまる」という横並びの編成でしたが、ここにきて日本テレビとフジテレビが“8時またぎ”の戦略で一致したことになります。
なぜ視聴者にとってわかりやすい“8時で一斉に番組終了”ではなく、“8時またぎ”の編成戦略が広がりつつあるのでしょうか。また、先行する日本テレビと追随したフジテレビの“8時またぎ”に狙いの違いはあるのでしょうか。
2010年以降、独走状態のNHK対策
まず“8時またぎ”の編成戦略が広がりつつある理由について。
これはシンプルにNHK総合の朝ドラ対策と言っていいでしょう。朝ドラは2010年春の『ゲゲゲの女房』から開始時間をそれまでの8時15分から8時ちょうどに前倒し。2000年代後半の低迷期を抜け出し、現在まで視聴率で独走状態をキープしています。
その間、民放各局は「8時ちょうどにチャンネルを朝ドラのNHK総合に切り替えられる」ことを回避するために、オープニングトークに工夫を凝らしたり、旬のニュースをランキング形式で見せたり、動物などの癒しコーナーを真っ先に放送したりなどの対策を講じてきました。
また、日本テレビの『ZIP!』とフジテレビの『めざましテレビ』には以前から「後番組よりも高い視聴率を獲得できるから放送時間を延ばしたほうがいいのではないか」という声がありました。その意味で“8時またぎ”は、8時台・9時台の情報番組で視聴率争いのトップを走るテレビ朝日の『羽鳥慎一モーニングショー』や、若年層に強いTBSの『ラヴィット!』への対策でもあります。
では『ZIP!』と『めざましテレビ』は今春、それぞれどんなコーナーのどんなテーマで“8時またぎ”しているのでしょうか。