日本年金機構のシンボルマーク。「日の丸」の上に「年」の一文字をシンボライズすることで日本国民の公的年金を運営する組織であることを表現(時事通信フォト)
振り返れば2015年から公務員の共済年金も「年金制度の安定」という名目で被用者年金一元化法により厚生年金に一元化された。「公平な年金制度」の実現の最終段階は国民年金も含めた一元化という財政統合でないか、という指摘もある。
目的外利用しようとする「胴元」ばかり
2004年に「100年安心」を謳った自公政権、社保庁の事件で出鼻をくじかれただけでなく小泉純一郎内閣は「マクロ経済スライド」を導入したものの減額しきれていないのが現状だ。現役世代そのものが急速に減り続けることはしばらくのところ確定なので、これから確実に保険料収入は下がり続ける。保険料の値上げにより現役世代の負担はさらに重くなるだろう。そして「社会的扶養」を目的とした「国民の共同連帯」による「所得再分配機能」による「相互扶助」のために厚生年金積立金は流用されようとしている。
何度も出ては消える厚生年金を流用しての国民年金のみ加入者の受給額引き上げと厚生年金受給額の引き下げという「相互扶助」案。この国の年金制度に優れた点があることは言うまでもない、相互扶助が大切なことも大前提だ。しかしそれを目的外利用しようとする「胴元」ばかりが入れ替わり立ち代わり現れる現実がある。繰り返すが先に「公平な年金制度」を裏切ったのは胴元の側である。信用なくして痛みは分かち合えない。
いずれに決着するにしろ、厚生年金はいまもこうして狙われ続けている。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/出版社勤務を経て、内外の社会問題や社会倫理、近現代史のルポルタージュを手掛ける。日本ペンクラブ広報委員会委員。