※『裁判官の正体 最高裁の圧力、人事、報酬、言えない本音』(中公新書ラクレ)より
ここで裁判官の報酬月額の一覧表の初任給調整手当欄を見ると、判事補に任命された直後の12号は、初任給調整手当が8万7800円とあります。原則の報酬23万7700円にこの初任給調整手当8万7800円を合計した32万5500円が実際にもらえる金額となります。原則の報酬が上がるに従って初任給調整手当は減額されていき、判事補4号(報酬月額34万1600円)ではなくなります。初任給の原則23万7700円だけでは人材確保は困難となるための弥縫策(びほうさく=一時しのぎの対策のこと)なのです。
報酬制度の段位は、判事補で12段階、判事で8段階あります。こうなると、上の階段にいつ上がれるのか、同期の中でまさか自分が置いてきぼりされているのではないだろうかとか、思いはいろいろ起こります。階段が多ければ多いほど報酬に対する関心が深くなります。これは別に裁判官だけの特殊事情ではなくて、一般職国家公務員や会社員でも同様だろうと思います。会社員とは違って、報酬の額までこのように階段の刻みに応じて金額が法定されているところが、裁判官の特徴といえば特徴です。
司法修習が終わって最初に判事補に任命されて得られる12号23万7700円という額は、私はかなり低いと思います。司法試験を頑張って合格して1年間(私の頃は2年間)司法修習を終えてこの金額です。努力の割には十分な金額は得ていないように思います。年功序列、熟練的な発想で何とか我慢してやっていくかという気にはなりますけれど、初任給の低さは特筆すべきではないかなと思います。初任給調整手当を考慮すると若干緩和されますが、所詮弥縫策にすぎません。