報酬の仕組み全体がおかしいのではないか?
確か、中学校の公民の教科書には、裁判官の独立を守るために、裁判官の給与は高い──といった記述があったように記憶していますが、弁護士になった同期とは比べ物にならないのはもちろんのこと、一般企業に就職した友人よりも低かったです。
私が司法試験を受けた当時は、司法制度改革前だったので、2万4000人ほどが司法試験を受験し、合格したのはわずか450人ほどでした。
そういえば、法律家になった仲間たちの集まりで、「俺は、ギャンブルは嫌いだ」といった趣旨の発言をした者がいて、その場に居合わせた全員から、「でも、司法試験受けたんだろ!」と突っ込まれていました。かつて、司法試験の受験は、ギャンブルのようなものだったので。中には10年もかけてようやく合格した人もいました。それなのに、この初任給なのかと。努力とあまりに見合わない気がするのは私だけではないはずです。
【プロフィール】
井上 薫(いのうえ・かおる)/1954年生まれ。東京都出身。東京大学理学部化学科卒、同修士課程修了。司法試験合格後、判事補を経て1996年判事任官。2006年退官し、2007年弁護士登録。著書に『司法のしゃべりすぎ』『狂った裁判官』『網羅漢詩三百首』など。
(了。第1回を読む)