コールセンターへ怒りをぶつける人たちは少なくない(写真提供/イメージマート)
理不尽な怒りをぶつけられてはいるが、乗客からの苦情という意味では一方的に謝るしかない状況、しかも自身ではどうしようもないことで、中年のサラリーマンに追及されていた若い駅員には気を落とさずに頑張ってほしいと思う他ない。こうしたトラブルは「自分には関係のないこと」と思っていても巻き込まれる可能性がある。
この仕事をしていると人間不信になりそう
駅で騒動を起こした中年男性と同じような迷惑人物が引き起こす事例は決して珍しいものではない。同じような揉め事を何度も目撃したことがあるし、周囲にも「見かけたことがある」と言う人は多い。都内のキー局に勤務し、いわゆる「視聴者センター」に勤務する派遣社員の女性(40代)も、今まさに、若い駅員と似たような境遇下にあると訴える。
「テレビ局の不祥事などが相次ぎ、SNSでマスコミを批判する向きが特に強くなったのは、コロナ禍以降でしょう。世間的に意見の割れやすかった新型コロナウイルスの諸報道、ワクチン問題や政治問題を報じる中で、マスコミは特に叩かれやすい存在になったと感じます。特に最近はバカ、アホとか言って一方的に切られるものではない、一方的な”ご意見表明”をなさる方が特に多いです」(視聴者センター勤務の女性)
「マスコミは嘘つきだ」というパターンが最も多く、報道スタンスへのクレームや、最近はマスコミ不祥事を指摘されることも多いという。ただ、この女性の仕事は視聴者の「ご意見」を伺うことであって、そのご意見に対して何らかのアンサーをその場で出す、という立場にはない。それは、普通に社会人経験のある者なら想像がつくはずなのだが、結局、マスコミに一言物申してやろうという人々の怒りの矛先は、そうした女性たちに向かって行くことになる。
「最近では”報道局長や社長を出せ”とか”録音しているから気をつけろ”と言われることも増えました。実際、私どもへの電話を録音し、無断でネットに流されたこともあります。私たちに文句を言ってもどうしようもなく謝るしかないのですが、この仕事をしていると人間不信になりそうです。実際に、若い部下は仕事がきついとすぐ辞めていき、現場は少ないベテランの派遣社員を中心に回しています」(視聴者センター勤務の女性)」
ちなみに、女性の職場では全ての音声データが電話番号や着信日時、そして担当者の応対メモと共に全て記録されているため、要注意相手からの着信があった場合は、すぐにわかるようになっているともいう。頻繁、執拗な嫌がらせについては、適宜警察へ通報し、逮捕まではされずとも、厳重注意に至る事案は、女性が在籍した数年間の間だけでも何件も起きたという。