コンビニ店員に怒りをぶつける人も店員も「下っぱだから」(写真提供/イメージマート)
あの人たちも多分下っぱ
ここでも、言われた相手が謝るしかない一方的な状況、しかも言われている人にはどうしようもない事象について、一方的に責められ続ける現実が存在していた。筆者はさらに、コンビニでアルバイトをする外国人留学生の男性(20代)に「いろいろ嫌な思いを受けたのではないか」という目論見を持って話を聞いた。ところが留学生は「下っぱ同士で争っているだけ」と笑うのだ。
「タバコを商品名で言われて、商品名がわからないとチッって言われたりとか、日本人連れてこいと言われたりとか、します。こちらは、とりあえず謝るしかできません。日本語覚えろと言われて、ごめんなさいというしかない。でも、普通の人ならそんなことは言わないです。たぶん、会社とか家でいろいろあって、イライラして僕達にぶつけてくるんです。僕達が、外国人で若くて、お金もない下っぱだから。でもあの人たちも多分下っぱ」(外国人留学生)
この留学生がいうことに「なるほど」と思いつつ、一体どれほどの人間がそのように冷静で、穏やかな気持ちを保てているのかと不安になった。また、末端にいる人同士だけが直接対峙する、という構図は、独裁者による暴政下で起きる庶民どうしの揉め事のようにも感じられ、結局、根本的な問題は何も変わらないし責任の所在も不透明、もしくは誰も責任を取らぬまま問題は先送りされるだけだ。
いずれにせよ、こうした一方的なクレーム等にまつわる問題は、ほとんどの場合、過度なクレーマーのわずかな自尊心がすこしだけ満たされるだけだ。多くの人々の気分を害させ、生産性すら奪い取るだけで、自分が被っている不都合の原因から目をそらしていることにも他ならないのだ。