政府備蓄米で作ったおにぎりを試食する江藤拓農林水産相(時事通信フォト)
ごはんを炊くのにコンニャクなどでかさ増しをする、なんて生活の知恵は、近年ではダイエット目的でしか聞かれなかった。ところが、最近は高いコメを食べ繋ぐためのノウハウとして共有されている。全国のスーパーで1週間に販売されたコメの価格が15週連続で値上がりし、前年同時期の5キロあたり2078円に対して、4217円(農林水産省4月21日発表)と倍以上を記録している。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、コメをめぐる政府と国民のすれ違いについてレポートする。
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コメはどこに消えた。
コメなんてあってあたりまえだった。
いつでも店頭にあって、安くて、それでもちょっと前まで「コメが売れない」「コメ離れ」なんて話もあった。
あったというか、いまから30年以上前の1993年ごろ、いわゆる「平成の米騒動」の収束以降ずっと、コメに関してはそうだった。減反と補助金頼み、農協支配の果てに「もう内需が見込めないから輸出産業に転換しては」だった。
しかしもう、ずっとコメの価格が上がり続けている。上がり続けるどころか店によっては米がない。安いコメが無いどころか、そこそこ出して買うレベルのコメも品薄だ。
「申し訳ないと、思っておりますよ」
「(コメの品薄について)お金さえ出しさえすれば手に入るということをですね、日本人が信じ過ぎたがゆえにですね、私は食料自給率が低過ぎたという、私は側面があると思っています」
はいはい、またテレビのよくわからないコメンテーターの戯言か、と思うかもしれないが、この国の農林水産大臣、江藤拓氏(自民党・宮崎2区)の4月22日の会見上で出た言葉である。「日本人が信じ過ぎたがゆえ」だそうだ。
「(コメの価格について)今年ですね、なかなか国民のご期待に応えられない。備蓄米を出してもですね、店頭価格が下がらないということについては、責任を重く感じておりますし、申し訳ないと、私自身もですね、思っておりますよ」
そして、ついに大臣は謝罪した。