地面師事件の人物関係図
だが、Aにこの手紙の内容を伝えると「とぼけてそんなこと言うとは私もゾッとします。まあ、あいつは変わり者だから」と笑い、こう続けた。
「小山(=カミンスカス)は指示役の土井さんから直接『客づけ』を頼まれて中間業者に繋がり、同時に積水にも繋がっていた。だから羽毛田が偽者だと知らないわけがないのよ。金を受け取ってないというのも嘘。実際、小山が1億円の入った白い紙袋を土井さんからもらってるのを見たしね」
このように当事者同士の言い分は食い違う。
その後、犯行時に運転手を務めたC(逮捕後に不起訴)にも接触した。Cはカミンスカスについて「何度か乗せました」と認めたが、「もちろん私も羽毛田が偽の地主とはその時点では知りませんでした」と語った。
大手デベロッパーも信じ込まされた以上、「自分も“偽の地主”に騙された」という説明に一定の理も感じるものの、自らを免罪するうえで使い勝手のいいロジックであることもたしかだ。
食い違う「地面師たち」同士の証言──後編記事では、カミンスカスに指示を出す立場の“主犯格”とされる土井淑雄が主張した「検察のストーリー」、Aが語った「地面師たち」の“本当の関係性”について詳報する。
■後編記事:《【「地面師たち」からの獄中手記】積水ハウス55億円詐欺事件“主犯格”が主張する“別の主犯”の存在 主導権と金の奪い合いが展開される“地面師詐欺の世界”》に続く
【プロフィール】
河合桃子(かわい・ももこ)/1977年、東京都生まれ。ライター。週刊誌を中心に執筆。幅広く取材活動を行なっており、特に性風俗にまつわる事件などアングラな業界を長年取材している。
※週刊ポスト2025年5月9・16日号