指示役の土井淑雄
2017年に世間を騒がせた「積水ハウス55億円詐欺事件」。大手デベロッパーが詐欺集団に騙された驚くべき事件は昨年、ドラマ化されたことで改めて注目を集めた。すでに逮捕されたメンバーには実刑判決が下されたが、“主犯格”とされる3人(権利証などを偽造したとされる内田マイク、指示役の土井淑雄、交渉を主導したカミンスカス操)は、今も真相は別のところにあると主張していた。
獄中の「地面師たち」とやり取りした手紙の内容からは、事件の闇がまだ深いことが浮かび上がってくる。獄中にいる“主犯格”の1人であるカミンスカスからライター・河合桃子氏に宛てられた手記には、「自分は無実だ」「騙された」という主張が綴られていた。その主張は、他のメンバーからの証言とは食い違う。真相はどこにあるのか。河合氏がレポートする。【前後編の後編】
■前編記事:【「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手】積水ハウス55億円詐欺事件・受刑者との往復書簡 “主犯格”は「騙された」と主張、食い違う当事者たちの言い分
カミンスカスに指示を出す立場の“主犯格”とされる土井淑雄にも接触した。土井は詐欺師業界の有名人で、地面師としてだけでなく過去に様々な騒動に関わったとされる人物である。
獄中の土井に対して速達で送った手紙には、速達で返答があった。
そこには〈あなたは私を有罪だと思っているか。それとも無罪? その答え次第で取材に応じる〉とあった。他にも様々な逆質問を綴りつつ、カミンスカスとは違った表現で、“別の主犯”の存在を主張した。
〈主犯は起訴されていません。私の事件を知る限りでは4~5名です。内田も当初は中心人物だったと思いますが、メインの主犯4~5名に利用されたと(略)私の調査で判りました。何人かの捜査も検事(他の地面師担当)は、私が今回の件に関与してないと信じていますし!〉
そしてこう続くのだ。
〈すでに私の逮捕時には検察の主犯ストーリーが出来ていたようです!! 最後に復帰したら再審請求します。(略)私が積水事件に関与してなかった証拠もあります〉(すべて2025年2月20日消印)
土井の言う“メインの主犯4~5名”とは誰か。何度も手紙を送ったが、最初の返信から2か月が経った今も返事はない。
「有罪か無罪か」の問いに私が「有罪だと思っているが、不服があることは理解します。その不服の理由を伺いたい」と返したことが気に入らなかったのかもしれない。
ただ、内田とともに計画を練り実行役に指示したとされる土井が、主犯はその2人以外に存在するという主張を持っていることはわかった。