日本人の血管は破れやすい
生活習慣病のうち、昔から日本で多かったのは高血圧と、高血圧を原因として脳の血管が破れる脳出血です。脳出血は、命を取り留めても重い後遺症に苦しむ人が少なくない恐ろしい病気で、1980年まで日本人の死因第1位でした。高血圧の人が多かった上に、日本人は遺伝子のせいで血管が破れやすい傾向があるためだと考えられています。脳出血が減ってきた現代でも、日本の脳出血発症率は欧米の2〜3倍高いのです。
高血圧の発症にも遺伝が関係しており、両親がともに正常血圧だと、高血圧になる子供は5〜10%なのに対して、両親が揃って高血圧だと50%の子供が高血圧になります。
また、高血圧というと、「塩分の摂りすぎ」が頭に浮かびます。確かに昔の日本人は塩分摂取量が多く、1960年には1日1人あたり約17gを摂取していました。近代までは調味料の種類が限られていましたし、冷蔵庫のなかった時代に蒸し暑い日本で食品を保存するには塩漬けが便利だったからです。
困ったことに、日本人を含むアジア人やアフリカ人は、遺伝子の関係で、同じ量の塩分を摂取しても欧米人より血圧が上がりやすいという説があります。
そうだとすると、日本人は欧米人以上に減塩が必要だということになりますが、大規模な国際調査ならびに近年の研究から、意外なことがわかりました。血圧を下げるためには減塩と同じか、それ以上に大切なことがあるというのです。
その1つがカリウムの摂取を増やすことです。塩に含まれるナトリウムを過剰に摂取すると血圧が上がりますが、このナトリウムの作用を打ち消してくれるのがカリウムです。高血圧患者さんのうち、カリウムを多く摂取している人は、途中で血圧の薬をやめられる割合が高いこともわかっています。ただし、自己判断は厳禁です。
カリウムが豊富に含まれている海藻や大豆、いもなどは日本人に親しまれてきた食材ですが、それでも日本人のカリウム摂取量は、血圧を安定させるために必要な量の半分にとどまっています。これらの食品は煮るとカリウムが流れ出て、小さく切ってゆでると4分の1程度になってしまうため、煮て調理する場合は煮汁も飲むようにするとよいでしょう。電子レンジで下ごしらえすればカリウムを充分残せます。また、自然の食品に含まれるカリウムの量は、旬の時期に最も多くなります。
カリウムは果物にも多いのですが、果物は中性脂肪を増やして内臓脂肪を蓄積させるため、ほかの食品からの摂取を優先してください。