カリウム摂取のほかに力を入れる必要があるのが節酒と減量です。アルコールは血管を収縮させ、心臓の拍動を速くする上に、体にとって必要なミネラルを体から追い出すことで血圧を上げると考えられています。
アルコールが体に及ぼす影響にも遺伝子がかかわっていて、日本人の半数近くの人が、アルコールを分解する酵素の働きが弱くなる遺伝子を持っています。そのため、アルコールをしっかり分解できる遺伝子を持つ人とくらべて、アルコールで体を壊しやすい傾向があります。
日本人が血圧を上げずに飲める量は、日本酒なら1日1合まで、ビールなら中瓶1本、550mlまでです。アルコール自体が血圧を上げるため、「血圧を上げにくいアルコール飲料」は存在しないと肝に銘じてください。また、肥満の人は、そうでない人の2.3倍も高血圧になりやすいことが明らかになっています。太り気味の人はせめてあと2kg体重を落としましょう。
私たちの強みを引き出す青魚
脳の血管が破れる脳出血とは対照的に、日本人に少ないのが心臓の血管が詰まって起きる心筋梗塞です。日本人は動脈硬化が進みにくいという有利な体質を持っており、そのおかげで日本は心筋梗塞の発症率が昔もいまも世界で最も低い国の1つです。
その理由が日本人に備わった遺伝子と、魚に含まれるEPAとDHAをしっかり摂取してきた食生活です。日本人は「破れやすい」けれども、「詰まりにくい」血管を持っているということですが、今後はどうなるかわかりません。心臓の血管が詰まる心筋梗塞は少ないものの、脳の血管が詰まる脳梗塞が急増して、現在では発症率が脳出血を追い抜いているからです。
なぜでしょう? ここでも犯人は内臓脂肪です。1965年頃の高度経済成長と歩調を揃えて食の欧米化が進んだことで、内臓脂肪が増え、それまで日本では少なかった脳梗塞や糖尿病、乳がんや大腸がんが増えています。脳梗塞が増えたのは、内臓脂肪が動脈硬化を進行させる物質を作るからです。また、内臓脂肪は、この後に説明するインスリンの分泌を過剰に高める物質も作っており、大量のインスリンには、がんの発生を促す作用があります。
なかでも糖尿病の増加には、日本人の食生活の変化が大きく影響しました。食事をして血糖値が上がると、膵臓からインスリンというホルモンが出てきます。これによってブドウ糖が体に吸収され、血糖値が下がります。ところが日本人は遺伝子の関係で、欧米人とくらべてインスリンを少しずつしか作れません。そのため、欧米人やアフリカ人と同じ食事をすると、膵臓に負担がかかり、糖尿病を発症しやすくなります。
また、内臓脂肪は血糖値を上がりやすくする物質を作るため、内臓脂肪が増えるほど糖尿病の危険が高まります。