弁護人「新横浜駅から乗ってきた人のことは覚えていますか?」
小島「はい! 覚えています。女性で、人間でした。動物だと器物破損になるので、人間でないとやりません」
私は唖然とした。被害者女性X子さんについて話を向けられると、小島は一際大きな声でそう答えたのだ。ふざけているかのような返答だが、小島はむしろ得意げである。おそらく、「動物を殺すと器物破損になる」という法的知識をひけらかしたいのだろう。
弁護人「聞いていないことは言わなくていいです。ナタを入れた荷物はどうしましたか?」
小島「最初は足元に置いていたけど、荷物を棚に置いて立ち上がって、カバンからナタを取り出しました。これは計画のうちです」
弁護人「ナタは、右手に持っていましたか?」
小島「右利きなので右手に持っていたけど、左手を添えたかもしれません。頭を狙いました。私は一撃で殺せると思ったのに、まだ全然死ななかったです」
弁護人「その後はどうしました?」
小島「殺すつもりで何回もやりました」
弁護人「途中で止めに入った人は覚えてる?」
小島「Z夫さんが肩を掴んできました。ナタを持った手で振り払ったら、Z夫さんは後ろに倒れました。身体を回転させてZ夫さんのほうを向いたら、Y美さんがいたので、殺すつもりでナタを当てました。そのままY美さんが逃げたので、Z夫さんのところに行って、なんとか馬乗りになることができて、ナタで頭を切り落とそうと何度も振り下ろしました」
驚くのは、小島の記憶力の良さだ。どんな凶悪犯罪者でも、犯行時は気が高ぶって記憶があやふやになっていることが多い。しかし小島は、ゾッとするほど冷静に記憶している。
弁護人「車掌さんが来たのは気づきましたか?」
小島「キャリーバッグを持って接近してくるときに気づきました。『私は車掌の〇〇です』と、お名乗りになって、『その人を助けたい』とおっしゃった。Z夫さんはまだ生きていたので、構わず続けました。Z夫さんが死んだだろうと思ってナタを振り下ろすのを止め、新幹線が停車するとき、ナタを通路に置きました」