小島は、ナタを振り下ろすジェスチャーをしながら、まるで他人事のように、現場の様子を語っている。
検察「Z夫さんの様子はどうでしたか?」
小島「うん、まあ苦しそうな感じでしたね。言葉も発せられない状況です」
検察「止めてくれとかは?」
小島「まったく言われません。ただ苦しそうでした」
検察「Z夫さんが可哀そうとは思わなかった?」
小島「とりあえず、殺すことだけ考えていました」
検察「記憶では、何回くらいナタを振りましたか?」
小島「数えきれないくらいです」
検察「Z夫さんの胸に、複数の刺し傷があったと聞いていますが」
小島「もちろん私がやりました」
検察「止めなかったのはなぜですか?」
小島「生きているかもと思って続けました。まだ血が出ているし、心臓の鼓動がしていたので、馬乗りでがっつり挟んでいる太ももから、振動がありました」
私は不思議だった。いくら刑務所に入りたいから殺人を決意したとはいえ、小島は快楽殺人犯ではないのだから、実際に殺す場面で動揺しないのだろうか。大量の血を見る経験だって、人生ではじめてのはずだ。しかし面会で質問したときも、小島は特別な感情はなかったと答えている。この淡々とした説明を聞くに、恐らく本当に冷静だったのだろう。
検察「Z夫さんが、もうまったく動かなくなったときはどう思いましたか?」
小島「よし! 人を殺せたぞ! と思いました」