他方、警察庁は昨年6月、警備体制の検証報告書を公表。和歌山県警について、自民党和歌山県連など主催者側との調整が不十分だったとし、「綿密な協議を行う必要があった」と警護計画の不備を指摘した。
警察首脳が特に問題視したのが、演説会の詳細かつ具体的運営方法についての連携不足だ。その9カ月前に凶弾に倒れた安倍元首相も、参院選の応援演説の機会を狙われていたからである。数多くの有権者・聴衆に囲まれる国政選挙の演説のスキ・間隙を再び突かれたのは「教訓が生かされていなかった証拠」(前出の警察庁関係者)とみなされたわけだ。
「“ドブ板選挙”は警護の負担が段違い」
2件の重大要人テロを踏まえ、警察庁は思想や主義主張を掲げる組織などに属さず人知れず過激化するテロリストの対策を強化。一昔前はローン・ウルフとも呼ばれた、このローン・オフェンダー(単独テロ犯)については刑事や生活安全、地域など各部門が捜査や職務質問で得た要注意人物情報について、警備部門に集約する制度を導入したほか、サイト管理者などへの削除要請対象に爆発物や銃の製造に関する情報を追加。昨年、実際に削除させている。
また銃刀法を改正し、銃の製造法投稿を罰則付きで禁止する方針だ。「しかしこれは地道な警護の強化策ではありますが、結局は“対症療法”に過ぎないのです」(同前)。その上で「1981年にシークレットサービス(ボディーガード)に囲まれて車に向かっていた講演後のロナルド・レーガン米大統領が拳銃で撃たれた事件が典型例ですが、要人警護に絶対はないのです」とも語る。