東急電鉄が導入開始をアナウンスしているタッチ決済による乗車サービス
これらは日本在住者と外国人観光客との間に価格差をつける二重価格と異なる趣旨だが、心理的にも技術的にも二重価格の導入というハードルを下げている。そのため、鉄道・バスといった交通事業者が二重価格導入に踏み切れば、あっという間に鉄道・バスの二重価格は当たり前になっていくだろう。
逆に、JR グループの鉄道・バス路線が自由に利用できる“ジャパンレールパス”は、外国人観光客だけが通常運賃より割引料金で移動できるため、実質的に「外国人観光客だけを優遇している二重料金」という批判もあった。
オーバーツーリズムによって日常生活に支障をきたしている人たちが、外国人観光客に割高な料金を設定する二重価格に賛意を示すことは理解できる。しかし、それは回り回って自分たちにのしかかる可能性もある。
ビジネスにおいて高く売れるモノ・サービスをわざわざ値下げする必要はない。訪日外国人観光客に高い価格を設定する二重価格は一時的な現象にとどまり、しばらくしたら高い値段へと統一されるだろう。
鉄道・バスは生活に欠かせないインフラで、”インバウン丼”とは同列に論じられないし、今のところ杞憂に終わる可能性も否定できない。だが、二重価格の設定が運賃を上げるための方便として用いられないように心しておきたい。