1971年から毎年、報告されてきた交通安全白書(内閣府)は、その時代の交通課題について特集を組んできた。最新の令和5年版では、自転車の安全利用の促進が特集テーマに掲げられている。日本の総人口が減少するにつれ交通事故が全体的に減少する一方、「10年間で全ての死亡重傷事故件数が約4割減少しているのに対し,自転車関連死亡重傷事故は約3割の減少」と、体感として自転車による深刻な事故が増えていることを示している。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、2026年までの「青切符」導入で取締りが強化される自転車利用をとりまく人たちの声を聞いた。
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「少し携帯を取り出して確認しただけなのにね。みんな守ってやしないのに運が悪い」
自転車から降りて苦笑いの高齢男性、都心の繁華街とあって自転車の往来もまた激しい。そして今日は警察官の数も多いが自転車を集中して声掛けしているのがわかる。職質でなく、交通違反だ。
筆者の見た取り締まりは携帯のいわゆる「ながら運転」などだったが、都内でも別の場所では信号無視や一時停止違反なども取り締まっていたと報じられている。
5月29日のこの日、都内117カ所でついに警察による自転車の一斉取り締まりが行われた。
実に大規模な取り締まりで、読者の中にも取り締まりの様子を見かけたり、それこそ違反で「自転車指導警告カード」(以下、警告カード)を渡されたりした人もいるかもしれない。
それでも高齢男性は「罰金(反則金のこと)なくてよかったよ」と話していたが、他の違反者を見てもそれほど堪えているようには思えなかった。実際「運が悪い」とも。他の人だと折りたたみ自転車の若者は取り締まりに「たかが自転車でしょ」と笑っていたが、これが2026年までに導入予定の「青切符」制度が始まると自動車やオートバイと同様に反則金の支払いを求められることになる。
自転車から、車と同じように罰金取るのはいいと思う
今回の取り締まり、いわゆる「青切符」制度、正式名称では交通反則告知書の導入が決まったことに対する周知と、年々増加する自転車の事故に対する啓発行為の一貫でもある。交通事故の自転車関与率は2018年の36.1%から毎年増加し2023年には46.3%となった。