2010年の南アフリカW杯決勝で「第4の審判」となり事前練習に励む西村氏(時事通信フォト)
昇級するごとに上がる審判の「条件」
審判員としてのスタートとなる4級審判の資格は、先述したように都道府県サッカー協会が開催する講習会で、競技規則と審判法を学ぶことで資格認定を得られる。
都道府県サッカー協会が主催する試合の主審を担当できる3級審判の昇級認定では、競技規則テストと体力テストが実施される。体力テストでは「75メートルを25秒以内で走り、さらに25メートルを30秒以内で歩く。これを1セットとして24回(陸上トラック6周)繰り返す」という設定をクリアしなければならない。
各地域サッカー協会の主催試合で主審を担当できる2級審判員はさらに条件が厳しくなり、瞬発力(スプリント)テストが加わる。まず「1分間隔でスタートする40メートルスプリントテストで6.90秒以内を6回繰り返す」、その後に「インターバルテストで75メートルを20秒以内で走り、25メートルを25秒以内で歩く。これを32回(陸上トラック8周)繰り返す」という条件だ。
そして日本サッカー協会の主催試合で主審を担当する1級審判員になると、さらに合格基準が上がる。担当カテゴリーによって若干の違いがあるが、例えばJ1担当主審であれば「1分ごとにスタートする40メートルスプリントで6.00秒以内を6回繰り返す」、その後に「インターバルテストで75メートルを15秒以内で走り、25メートルを18秒以内で歩く。これを40回(陸上トラック10周)繰り返す」となる。
カテゴリーによっては「YO−YOテスト」の結果も参考にされる。サッカー、テニス、バスケットボールなどで選手の能力を測定する持久力テストのひとつで、20メートルの往復走を10秒間の休息を挟みながら、短縮されていく時間内に何往復できるかで評価される。激しい運動の後に素早く回復する能力を測定するもので、選手と同レベルの運動能力が求められることになる。
「3級審判員が主に担当するゲームは、都道府県サッカー協会主催の少年少女やジュニアユースの試合です。担当ゲームのレベルに応じた体力テストをクリアしないと、選手の動きについていけないという考え方です。
試合中に審判として走る動きと、体力テストで陸上トラックを走る動きは異なりますが、体力テストの基準タイムはゲームの運動負荷とほぼ同等になるように設定されています。2級、1級となればより激しい動きを必要とされるゲームを担当するので、テストの合格基準もより高くなってくるわけです」