「闇バイト」の勧誘。「マニュアルなどでリスク回避の方法などを教えています」と説明された(イメージ、時事通信フォト)
「リフォーム詐欺後に続く犯行のほとんどはトクリュウの犯行で、名簿やデータベースを見て、その都度、闇バイトなどで集められた犯人たちが実行に及ぶ。資産があるし、しかもリフォーム詐欺でも騙されたとなれば、詐欺師は放っておかないでしょう。オレオレ詐欺など特殊詐欺の被害者は、一度騙されたら、今度は『被害を救済する』とか適当なことを言われて何度も騙される。詐欺師は、被害者リストを何度も”こする”んです。予想される最悪の事態としては、強盗リストに載ってしまうことだって考えられる」
トクリュウとは「匿名・流動型犯罪グループ」の略称で、警察庁が2023年に定義した組織犯罪の類型のひとつだ。彼らはSNSなどを通じて集められる闇バイトたちなど、離合集散を繰り返す、ゆるやかな結びつきで犯罪を実行する。資金の一部が暴力団に流れているなどの指摘もあるが、犯罪の実行犯を逮捕しても、細分化された実行部分を匿名性が高い通信手段で指令されただけということが大半で、実態をつかみづらい。そのトクリュウが金品を奪い取るターゲット情報を集める手段のひとつに、屋根の修理などを含むリフォーム詐欺が加わったというのだ。
特殊詐欺グループによるターゲット情報を集めたリストを使った、詐欺以外の犯罪というと、かつて相次いだアポ電強盗のことが思い出される。事前に役所や警察などを騙って電話をかけ、資産状況や在宅時間を確認した上で強盗に押し入る犯罪だ。その電話もかけづらくなったいま、強盗前の下調べに、リフォーム詐欺が利用されている恐れがあると坂田さんは指摘する。「屋根が壊れていますよ」とリフォームを口実に訪問してきた人物の相手をしてしまったことで、強盗でなくとも、リフォームどころではない大きな金額を狙った詐欺や空き巣のターゲットとして、不名誉なリストに自宅住所が載ってしまうかもしれない。
今年も台風のシーズンは目前だ。まずは、同様の被害が出ないよう、すでに各自治体などが出している注意喚起情報をいま一度確認して欲しい。さらに、その手口が日進月歩で”進化”していることも肝に銘じておきたい。そして彼らは、生活再建の手助けが必要な被災者であっても、騙しにかかるような考え方であることを、忘れてはならない。