あさりの産地偽装が発覚し、記者会見する熊本県の蒲島郁夫知事

あさりの産地偽装が発覚し、記者会見する熊本県の蒲島郁夫知事

「出戻り国産」という新たな危険も

 国産と輸入ものでブランド力や値段が大きく異なる食品は、特に産地偽装やロンダリングがされやすい。

「昨年12月には、北海道内で展開する3店舗で韓国産めばちまぐろを宮城県産と偽装して販売したとして、福岡市の業者に対し、食品表示法に基づく是正を指示しています。

 また、この業者はまぐろのほかにもインド産のバナメイエビをエクアドル産と偽装するなど、7商品計400パック以上で産地を偽り販売していたとされています」(奥窪さん)

 2019年にも、秋田県横手市の水産物卸会社がメキシコ産のまぐろを国内産として、県内のスーパー3店に合計3.4tあまりを納品していたことが明らかになっている。

 水産アナリストの小平桃郎さんは、水産物で横行する産地偽装の背景についてこう指摘する。

「水産業界は流通管理がほかの業界に比べてずさんな部分が多い。特に水産市場を介して流通するまぐろなどは、ひと昔前までは担当者が勝手に札を貼り替えても数か月は誰も気がつかないほど管理がゆるかったため、意図的に産地を変えるという行為があったと聞きます」

 なかでも産地偽装が容易なのは、冷凍モノよりむしろ生鮮水産物だと小平さんは続ける。

「海産物を流通させるために『倉庫法』にのっとって登録された『営業冷凍倉庫』を介して流通する冷凍品は入出庫の際に産地などが記載され、出し入れのために貨物がナンバリングされて管理されているので、誰が入れて誰が持ち出したかがきちんと記録されています。途中で産地を変えたらつじつまが合わなくなるので比較的産地偽装は難しい。

 一方、自社倉庫や工場で管理されているケースでは、その際に原料や製品を入れ替えたとしても第三者の目が届きにくい」

 生鮮水産物を巡っては、国産品をさらに価値の高い別の国産ブランド品に偽装して販売する手口も横行している。

 今年4月、京都府京丹後市産のブランドガニとして知られる「間人ガニ」を示すタグを不正に入手し、兵庫県産のズワイガニに取り付けて産地偽装し、販売していた同市の水産加工販売会社が警察の摘発を受けた。タグの入手に加担したカニ漁船関係者は、「15年前から渡していた」としており、産地偽装が常態化していたとみられる。

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