食品偽装はいまやふるさと納税にもおよんでいる(写真/PIXTA)
さらに水産業界には「出戻り国産」ともいうべき、産地のカテゴライズが難しい食品も存在するという。
「かつては水産大国といわれた日本ですが、過当競争のなかでコストカット目的に水産加工場を中国や東南アジアに移転した結果、日本で加工を請け負える拠点が充分ではなくなってきている。
国産の水産物の中には、身をさばいて回転寿司のネタ用にカットしたりといった作業のために一旦海外に出て、日本に戻ってきているものも多い」
たとえば日本でとれたさばをベトナムに持ち込んで塩さばに加工した場合、原産地としてはベトナムとなり、日本に戻ってきた際には「輸入国ベトナム」と表記されることになる。しかし、同時に原材料表示としては「マサバ(国産)」と表記することも認められる。消費者にとっては混乱の種になりかねない。
奥窪さんは「出戻り国産」に迫る新たな危機を指摘する。
「昨年夏、中国は福島第一原発の処理水放出への対応として、日本産水産物を全面禁輸としました。これにより、中国でそれまで加工していた日本産水産物も持ち込むことができなくなり、東南アジアの加工拠点などがその代替地となった。
しかし、中国の禁輸措置はあまりにも急かつ突発的だったことから、精査する余裕が持てず、衛生面の水準などが充分に担保されていない代替地が選ばれている可能性がある。そうした加工拠点から出戻る食品にはリスクが高まっています」
産地偽装やロンダリングは、農産物でも横行している。たとえば2022年には、鹿児島県出水市の青果物販売加工会社が10年以上にわたり、中国産のごぼうを国産として、福岡県内の業者などに卸していたことが発覚した。中国産のごぼうは検疫のために泥を洗浄された状態で輸入されるが、同社はこれにわざわざ泥をつけて「国産」として出荷していたのだ。
垣田さんは新潟県魚沼産のコシヒカリの生産量と流通量の“不都合なズレ”を指摘する。
「国内で『魚沼産コシヒカリ』として流通している米の総量が、実際の生産量よりも大幅に多いということが長年指摘されています。可能性のひとつとして、精米業者がほかの米と混合しているという疑惑もありますが、実態は不明です」(垣田さん)
「国産食品が危険」なのではない。国産=安全と思い込むことが、表示の偽装やカラクリを見抜けない一因となっていることに、いま一度注意を払いたい。
※女性セブン2024年7月4日号