「詐欺を防いだとか、強盗を説得したとかで感謝状なんて報道もありますけど、私個人としては市民としてできる限りのことはしても、そういう命がけの行動は仕事のうちに入っていないと思っています。見て見ぬふりはしませんが、限界はある」
彼の紹介で30代の女性アルバイトからも同様の話をうかがった。
「旭川の事件は私も許せませんしかわいそうですけど、コンビニの店員がそういう状況で必ず事件を防げるとは思いませんし、それを責めるのは酷だと思います」
本当に難しい問題で、私たち一般消費者がコンビニ店員にあれしろ、これしろで防犯まで「義務」のように押しつけるのは、ましてネットで叩くのは筋違いのように思う。「通報しておけば」は正論だが、自分ごとに置き換えても店員だったとして通報したかどうか、自信を持って答えることは筆者にはできない。
正論の目的外利用が正義の暴走へ
もはや社会の「インフラ」とみなされて久しいコンビニ、商品販売にまつわる作業だけでなく宅配便やチケットの発券、銀行機能から税金の支払いまで、それこそどこまでコンビニは担う気なのか、いや担わせる気なのかと思わされるほど多種多様な仕事内容である。
筆者はこれまでも『1店舗残して閉店したコンビニオーナーの告白「働く人が本当に集まらない」』『コンビニのアルバイトにも強いられる「自爆営業」空前の人手不足の裏』などコンビニ問題を取り上げてきたが、いまや都市部では円安と他業種の賃金上昇により頼みの外国人すら一部から「コンビニは安くて色々やらされるから嫌」と敬遠され始めるほどにコンビニの人手不足は深刻で、24時間営業をやめた店舗も続出して久しい。
先の元コンビニオーナーは語る。
「24時間やってるから治安を担えだったのが、24時間やらなくなった。言い方は申し訳ないが平成のころみたいに就職難で大勢の若い日本人がコンビニの非正規で働くような時代でもない」
旭川の事件とは少し離れた意見だが「なんでもかんでもコンビニにやらせる」が通用しなくなっているのは事実だろう。まして防犯はあくまで「協力」であり私たち市民と同様の立場である。旭川の犯人らが許せないと思うのは至極当然だが、コンビニや現場の従業員を責めるのは繰り返すが筋違いだろう。正論の目的外利用が正義の暴走につながる。