まずは市の発表資料(6月18日)を見てみよう。
〈部落差別を意図する賤称語を数十回にわたり執拗に繰り返し〉たと綴られているが、そもそも「賤称語」などという言葉では役人以外に意味が伝わらないではないか。
発表文や報道を総合すると、車内という密室での「賤称語」発言が判明したのは、職員の1人の「運転が荒い」という情報が寄せられ、別の職員がドラレコを確認したことに端緒がある。
しかも、ドラレコのSDカードが5月末に差し替えられていたことも判明。市は警察に盗難の被害届も出している。
大阪に向かった私は6月25日、大阪港湾局に問い合わせた。「賤称語」の中身を訊いたが、担当者はこんな答え方をする。
「具体的な発言を公表することによって、差別の再拡散につながるということで、この内容(賤称語)に止めています」
もっともらしい言い方だが、これでは何が問題なのかわからない。今後出る処分の妥当性も判断できないではないか。
「文脈を削った」発表
差別を受けてきた側はどう受け止めているのか。部落解放同盟大阪府連合会を訪ねると、高橋定・書記長がこう答えた。
「市は2人の職員が何を発言したか、ちゃんと公表すべきやと思います」
さらに「再拡散になる」という市側の言い分を伝えると、「そんなことはないわ」と否定して、こう不信感を露わにした。
「こうした事件は社会意識の反映やから、なぜ差別行為をするのかという原因や背景を突き止めないといかんのです。部落問題に対してどんな思いや経験があったのかを聞き取って、そこから処分や職員研修のあり方を考えるのがあるべき姿でしょう」
とりわけ問題視するのは、自治体で差別が繰り返されている点だ。2019年には、50代の大阪市環境局職員が大阪市内の駅のトイレで部落差別に関する落書きを繰り返したとして書類送検された。
「市はまた何か起きたらすぐに報告してくれるという約束でした。それやのに今回の発表は発覚から2か月半も後ですわ。なぜそうなるんか、全く理解できない」(同前)