人間の進歩は遅いから、新作のネタになりやすい
そこで行き着いたのが「人間をテーマにした新作」だったという。
「ケチな男の話や嘘つきの話とかがいい。それをオーバーに描く。師匠の“ラーメン屋”や私の“食堂風景”“びっくりレストラン”というのがそういう人間観察の話。人間の進歩が遅いということなんですけどね。
だから私はひとりでいても退屈しないんですよね。ひとりで映画を観ているとネタが浮かんだりしますね。風景物は楽だし、ウケた。相撲風景とかもそうですね。電車風景、風呂屋風景となんぼでもある。ボーッとしてられないんですよ。
90歳になったからと休んでいる場合じゃないですからね。どんどん作らないと…。ネタより現実のほうが前に進んでいるので大変だし、ウケなければどんどん捨てなければならない。それだけに作ったネタがウケた時の楽しさ、喜びは大きい。若い者のために高座を減らそうと思っているんですが、ネタができちゃうとみんなの前で話したくなってしまう。因果な商売です。
意地になって何歳まで高座に上がれるかの記録に挑戦しているわけではないが、見ていて痛々しいとか、見苦しいというのは嫌ですね。出ている時だけは格好つけて落語をやりたいと思っています。それができるうちは高座に上がりたい。これが本音かもしれません」