スポーツ

【パリ2024パラ五輪】増田明美・日本パラ陸連会長が熱烈解説「パリで輝くのはこのアスリート!」

今大会注目のアスリートをピックアップ(写真は佐藤友祈選手/アフロスポーツ)

今大会注目のアスリートをピックアップ(写真は佐藤友祈選手/アフロスポーツ)

 45個のメダルを獲得したパリ五輪に続き、8月28日に開幕するパラリンピックでも、メダル獲得が期待される日本人アスリートは多い。パラ五輪での注目アスリートと、彼ら/彼女らの活躍を見届けるうえで知っておきたいパラリンピックの歴史を、日本パラ陸上競技連盟会長の増田明美さんが語った。『パラリンピックと日本人』(小学館新書)の著者でノンフィクションライターの稲泉連氏がレポートする。

 * * *
「失ったものを数えるな、残されたものを最大限生かせ」

 パラリンピックの創始者であるイギリスの医師、ルートヴィヒ・グットマンは、脊髄損傷で車いすを使うようになった患者に、そんな言葉を投げかけてスポーツを勧めた。

 増田さんは、グットマンのこの言葉に強く心を惹かれてきた、と話す。

「様々な競技を通して記録に挑むパラアスリートの姿を見ていると、彼らの身体表現にいつも魅了されます。選手たちはグットマンの言葉通り、失ったものを数えていない。今あるものを最大限生かす様子に、私も力をもらい続けてきました」

「パラアスリート」の存在に注目が集まった大きなきっかけに、2012年にロンドンで開催されたパラリンピックがあった。同大会では義足などの装具を使う選手たちを、公共放送の「Channel4」が「スーパーヒューマン」と名づけ、大々的なプロモーションを行なった。チケットも連日完売し、パラスポーツの世界観を示す一つの転換点だったとされる。その後、2016年のリオ大会、2021年の東京大会を経て、「日本でもパラリンピックのスター選手が増えてきた」と増田さんは言う。

「例えば、競泳の視覚障害のクラスで連覇に挑む木村敬一選手は、スピーチも抜群に上手な選手団におけるムードメーカー。陸上競技でもマラソンのT12クラスで世界記録を持つ道下美里選手、上肢欠損のT47クラスの辻沙絵選手など、華のある選手が大勢いるんです」

オリ・パラ選手が合同練習

 近年、パラスポーツの競技のレベルは一段と向上しており、イギリスではオリンピック・パラリンピックの陸上選手が、事前に合宿トレーニングを行なっているという。

「日本でも100メートルで9秒95の日本記録を持つ山縣亮太選手が、義足のパラアスリートである高桑早生選手と一緒に練習し、同じコーチから指導を受けています。山縣選手は怪我でパリのオリンピックに出場できませんでしたが、健常者と障害者のアスリートがお互いに学び合い、互いに刺激を受けながら記録を伸ばすことも起こってきているんですね」

 また、パリ大会では各競技の世代交代にも注目したい。車いすテニスの小田凱人選手には国枝慎吾さんに続く活躍が期待されている。今年5月に神戸で行なわれた世界パラ選手権で銀メダルを獲得した福永凌太選手や石山大輝選手などにも増田さんは注目している。

「二人が活躍した神戸での世界選手権では、走り幅跳びで8メートル72センチという世界記録を持つ義足のジャンパー、マルクス・レーム選手が、大会後にこう言っていました。『皆さん、人と違うことに自信と喜びを感じてください』と。グットマンの言葉と共鳴するこのメッセージは、パラリンピックの持つ大きな意義を感じさせるものでしょう」

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン