ライフ

【逆説の日本史】「新ロシア帝国」の成立を阻止すべく「皆殺し」にされたニコライ2世一家

作家の井沢元彦氏による『逆説の日本史』(イメージ)

作家の井沢元彦氏による『逆説の日本史』(イメージ)

 ウソと誤解に満ちた「通説」を正す、作家の井沢元彦氏による週刊ポスト連載『逆説の日本史』。近現代編第十四話「大日本帝国の確立IX」、「シベリア出兵と米騒動 その9」をお届けする(第1432回)。

 * * *
 E=mc2ならぬM=e/c2、つまりM(物質の質量)はe(エネルギー)の結晶であることがわかれば、もし物質をすべてエネルギーに変換できたら莫大なエネルギーが得られることがわかる。これが、アルバート・アインシュタインの発見した特殊相対性理論の「功績」である。もっとも、一般には物質というものはきわめて安定していてエネルギーに変えることは不可能である。たとえばダイナマイトがいくら爆発力があるからと言っても、あれは爆発つまり急激な燃焼という化学変化を利用しているだけで、物質がエネルギーに変わったわけでは無い。

 では、どうやってそれを達成するかと言えば、自然界にある質量がきわめて大きく壊れやすい(核分裂しやすい)ウラニウムに、人工的に刺激を与えて核分裂を促進するという方法がある。これは一九三八年(昭和13)に、物理学者のオットー・ハーンらが発見した。簡単に言えば、ウラニウムの原子核が壊れて別の物質(バリウム同位体)に変わるとき、物質の一部がエネルギーに変わる、というわけだ。

 ダイナマイトの爆発力などとはくらべものにならないので、ダイナマイトの場合「t(トン)」単位で表示する爆発力を、原爆の場合は「Mt(メガトン)」で表示する。1メガトンは1トンの10の6乗倍である。つまり一九三八年以降、「原子爆弾」というアイデアがSFでは無く現実の問題となったのだ。

 アインシュタインは原爆には反対だった。だからこそ、当時のアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトに「原爆開発の可能性」を警告した。ナチス・ドイツがひと足早く実用化するのを恐れたのである。それを受け取ったアメリカでは、独自の原爆開発計画が進められマンハッタン計画という形で結実した。 広島・長崎に落とされた原爆は、この計画によって製造されたものである。

 ちなみに、人類は二十世紀末まで情報の「貯蔵」を紙に依存してきた。書籍(本)や書類がそうだが、ちょうどいまそれが、紙から電子媒体(USBやDVDなど)あるいはインターネット上のクラウドに変換しつつある。これらの利点は膨大な情報を詰め込めることで、だから情報の総量が単なる「バイト」ではなく「メガバイト」や「ギガバイト」で表示されるようになった。革命的な技術革新は、このような変化を社会にもたらす。

 ちなみに明治から大正初期ということで言えば、主要な「エンジン」が外燃機関から内燃機関へ変換されていったことも、きわめて重要である。なぜなら、蒸気機関を代表とする外燃機関は燃料が石炭でいいが、ガソリンエンジンや蒸気タービンを代表とする内燃機関は燃料が石油でなければいけないからである。つまり大量に石油を確保していなければ、艦隊を運用するなど不可能な世の中になっていったということだ。

 もちろん、陸上でも機甲化部隊を使うためには大量のガソリン(原料は石油)を必要とするということだ。これは自国で石油を産出するアメリカ、石油が豊富に産出する中東を抑えているイギリスやフランスが、戦略的にきわめて有利になったということでもある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
理論派として評価されていた桑田真澄二軍監督
《巨人・桑田真澄二軍監督“追放”のなぜ》阿部監督ラストイヤーに“次期監督候補”が退団する「複雑なチーム内力学」 ポスト阿部候補は原辰徳氏、高橋由伸氏、松井秀喜氏の3人に絞られる
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
メキシコの有名美女インフルエンサーが殺人などの罪で起訴された(Instagramより)
《麻薬カルテルの縄張り争いで婚約者を銃殺か》メキシコの有名美女インフルエンサーを米当局が第一級殺人などの罪で起訴、事件現場で「迷彩服を着て何発も発砲し…」
NEWSポストセブン
「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン