「安倍元総理の写真を利用」
公益通報制度とは労働者らが勤務先の不正行為を一定の通報先に伝える仕組みで、兵庫県の斎藤元彦知事を巡る文書問題で注目を集めた。2022年に改正された公益通報者保護法では、従業員300人超の事業者に内部通報へ適切に対応する体制整備が義務づけられている。
今回、世耕氏について公益通報を行なったのは近大教職員組合だった。その経緯について、同組合の藤巻和宏・書記長が、実名で取材に答えた。
「10月14日に世耕氏がX(旧ツイッター)で衆院選への出馬表明とともに、近大卒業式で故・安倍晋三氏がスピーチしたことなどを写真つきで投稿したのです。かねて世耕氏は近大を自身の政治活動に利用することを繰り返してきた。こうしたことは大学の私物化であり、法令違反も疑われる行為だとして通報しました」
当該の投稿は、【表明】と題したもので、確かに投稿内の動画に近大卒業式でスピーチする安倍氏の写真が使われている。「#だから世耕」のハッシュタグとともに、以下の文章が並ぶ。
〈安倍さんは生前最後の大学でのスピーチでこう述べていました。「私は第1次安倍政権を途中で放り出して安倍晋三は政治家として終わったと言われていた。でもそこから5年かけて総理大臣の座に返り咲くことができた。それは、自分が特別に優れた人間だったからではない。特別に強い人間だったからでもない。ただ一つ諦めなかったからです。」(中略)私も決して諦めていません。今回の選挙は、私は退路を断っての選挙ですが全力で頑張ってまいります〉
今回の衆院選を無所属で戦った世耕氏にとって安倍氏との親しさは最大の売りのひとつだった。選挙戦中には街頭で履く靴が安倍氏の形見だということまでアピールに使った。近大卒業式の写真はそうした文脈のなかで使われたのだ。
藤巻氏らはその行為が、「教育の政治的中立」を定めた教育基本法14条2項の〈法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない〉に反する疑いがあると問題視して、公益通報で指摘したのだ。