雪が降る都心を歩く人たち。2月5日、「最強寒波」の影響で東京23区を含む平地でも雪が積もった(時事通信フォト)
何かのルールを定めるとき、決めたときには確かに理由があっても、時間がたつとその理由が消滅することがある。ところが、原因が消滅したのにルールだけが残り、そのルールを守ることだけが目的として存続してしまう理不尽な事態が人間の社会には起きる。その都度、情勢に合わせてルールのほうを変更するのが本来なのだが、人々は変更に伴う労苦を避けがちだ。そのため、最強最長寒波が日本に到来しても、防寒着をめぐる謎のブラック校則に縛られる生徒たちがいる。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、生足を強いるブラック校則についてレポートする。
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「寒波でも白いソックス以外禁止です。『生足で寒くない?』とか『ギャル?』とか聞かれるけどそうじゃない。普通に生足じゃないと校則違反なんです」
高校受験真っ只中、東海地方の女子中学生は地元の理不尽な校則がおかしいと話す。
とくにこの「タイツ禁止」問題。本稿、ストッキングもニーハイ、サイハイも含めて「タイツ」とさせていただくが、いわゆる「理不尽校則問題」そのものがかなり地域によるようで、これも世間の関心を声ほどには呼ばない理由になっているように思う。
筆者は『下着の色指定&チェックするブラック校則「内申書あるから我慢」はおかしくないか』(2021年)など度々、理不尽な「ブラック校則」について書いたが難しい問題だ。小学校、中学校、高校で違ったり、それこそ地域の文化や学校の伝統、方針によっても違ったりする。私立、公立の違いもあろう。
「東京だと黒いタイツがむしろステイタスみたいな学校もあるじゃないですか、なに履いてもいい学校もある。うらやましいです」
そう、東京だと一部を除けば(もちろん理不尽校則は区立の中学校を中心にいまだ存在するが)ピンと来ない人もあるのではないか。「黒いタイツがむしろステイタス」と彼女が話すのはお話を伺った飯田橋近くにある名門女子中高の子たちを指している。
伝統で白いソックスと共に式典の正装や冬の防寒に黒タイツを履く中学、高校はある。都立もまた自由な校風の高校が多い。
東北地方などはタイツOK、防寒のため自由にレギンスやニーハイで通う子たちもいる。まさか大雪の中で長距離の生足登校というわけにもいかないのでそこは柔軟というか「あたりまえ」の防寒対策となる。
そうした地域の「あたりまえ」が別の地域で「あたりまえ」でなくなる。それこそ「あたりまえ」の話だが、人の騒動の大半はこの「あたりまえ」の違いが引き起こす。
「なぜ白いソックスだけで生足を出さなければいけないのか、その説明って先生はしてくれません。ただ『ずっと決まっているから』です」