行きすぎがあっても大目に見る

 左翼勢力の「共産圏の国家の悪は暴きたくない」というのが、こうしたインチキマスコミそしてインチキ政党の「熱き思い」である。『逆説の日本史 第二十六巻 明治激闘編』でも紹介しておいたが、社会民主党に至っては同党のホームページに「北朝鮮は拉致などしていない、そんなことを主張するのは陰謀だ」という趣旨の論文を掲載し、小泉訪朝で事実があきらかになった後も論文をそのまま掲載していた。さすがに各方面から抗議が殺到し削除はしたが、この例を見てもわかるだろう、彼らは真実を認めたくないのである。

 さて、あなたがもしこういう国に生まれ育ったら、そして社会のしかるべき責任のある立場に就いたら、どう思うか。話は簡単だろう。「まともな新聞が欲しい」ということだ。そこで自民党やそれを支援する財界のなかから、朝日などとはまったく違う視点を持つ新聞を作るべきだ、という動きが出てきた。そうした政界、財界の要望に応じた形で創刊されたのが、この新聞なのである。

〈産経新聞 さんけいしんぶん
産業経済新聞社(本社東京・大阪)から発行されている全国紙。「モノをいうシンブン」を標榜(ひょうぼう)して、日本でもっとも保守的な全国紙として知られる。前身は1933年(昭和8)6月、前田久吉(ひさきち)(1893-1979)が大阪で創刊した『日本工業新聞』。第二次世界大戦中の新聞統合により、1941年6月、愛知県以西の産業経済関係の新聞社33社を吸収合併、1942年11月、題号を『産業経済新聞』と変更した。戦後の1950年(昭和25)3月、東京でも印刷・発行を開始。紙面を経済紙から一般紙に切り替えた。1955年11月、福沢諭吉創刊の由緒ある『時事新報』と合同、東京発行紙を『産経時事』としたが、1958年7月には、東西発行紙の題号を『産経新聞』に統一、名実ともに全国紙となった。同年10月、創立者前田が退任、財界から水野成夫(しげお)が社長に就任し、科学的管理方針を掲げ、労使間に平和協定を結び、編集・事務部門の機械化・合理化を進めるとともに、1962年いち早くコンピュータを導入するなど、新聞界の注目を集めた。1963年以来ラジオ、テレビと提携、立体報道の強化を進め、1967年12月には、フジテレビ、文化放送、ニッポン放送とともに「フジサンケイグループ」を結成した。(以下略)〉
(『日本大百科全書〈ニッポニカ〉』小学館刊 項目執筆者高須正郎、伊藤高史)

 つまり、政界、財界は産経新聞の絶対的な応援団になったということである。じつは、フジサンケイグループといっても、フジテレビの報道は必ずしも産経新聞の論調と一致していないのだが、それでもとくに保守勢力にとっては頼もしい味方であったことは間違いない。悪い言い方をすれば、「フジサンケイグループは絶対に潰してはならない。だから多少行きすぎがあっても大目に見る」ということで、それが日枝久「法皇」の絶対的権力確立にもつながった。

 時代錯誤とも言える「上納文化」など「昭和」が色濃く残ったとされるのも、かつてフジテレビを買収しようとしたホリエモンこと堀江貴文氏が「よってたかって叩き潰された」のも、ここらあたりに原因がある。

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