華麗な守備とシュアな打撃で元祖ミスタードラゴンズと呼ばれた高木守道。のちに監督も務めた(産経新聞社)
落選する高木に「選挙の残酷さ」を学んだ
こういう話を始めると止まらなくなるから、本筋に戻ろう。
ドラゴンズから「何を学んだか」って話。
答えは明白だ。ズバリ、民主主義の残酷さだ。
統計の裏付けはないが、そのせいでドラファンの臼歯はジャイアンツファンより幾分薄くなっているはずだ。切歯扼腕。
真っ先に思い出すのは、私の野球の記憶が始まる頃。ドラゴンズの栄光の背番号「1」を背負っていた高木守道選手だ。そして、オールスターのファン投票だ。
高木選手、セカンドの名手で日本野球にバックトスを定着させたレジェンドだ。華麗な守備に加え、走っては盗塁王も獲得。年間20本近い本塁打も放っていて、新聞のスポーツ欄にある「打撃10傑」の常連だった。
もちろん名球会入りも果たしている。
なによりもドラファンの心をつかんで離さなかったのは、高木選手のクールなプレースタイルだ。びっくりするようなファインプレーをしても、ホームランを打っても、派手なガッツポーズどころか、ニコリともしない。
シブい。クール。冷静。職人。
その高木選手が、オールスターのファン投票ではいつも(といっても2回だが)ジャイアンツの土井正三選手の後塵を拝していた。「なぜなんだー!」という話だ。
オールスター出場者が発表される日は、「ちぇっ、やっぱり土井の野郎か」と、朝から父親が不機嫌に毒づくのが恒例(といっても2回だが)だった。
そりゃ、「巨人・大鵬・卵焼き」の時代。しかも土井は巨人のV9戦士だ。仕方がないといえば仕方ない。でも、数の論理で押し切ろうっていう、嫌な空気も漂う。多数決という民主主義の、なんとも腑に落ち切らない居心地の悪さだ。
それにもまして得心がいかないのは、「監督推薦枠で出場」というポジションだ。名誉白人ですか。はい、微調整しました、みたいな。
内閣改造に際して男女比を気にして、「もう一人くらい女を入れとくか」って感じ。露骨な「数は力」はまずいから、「ちゃんと少数派の声を聞きました」ってエクスキューズ。
“選挙”はアリバイだけで、後はやりたい放題って、おい、自民党かよ。