まあ、いい年になったいまなら分かるよ。本当はジャイアンツファンによるジャイアンツファンのためのオールスターだったって。「東京の祭典」を「日本の祭典」っぽく見せるためには、「監督推薦」っていう“配慮”が必要っていう。大人の事情だ。
地方のテレビ局はそれぞれ視聴率を稼がなきゃなんないし、スポンサーの意向ってヤツもあるだろう。だから、微調整だ。
つまり何が言いたいかっていうと、投票なんて“ガス抜き”は選手の評価とは違うってことだ。選挙も、民主主義も完全じゃない。「ノット・ワースト(最悪じゃない)」って喝破したのは、イギリスの元首相、ウィンストン・チャーチルだ。分かってるね、チャーチル。ドラファンは噛みしめるよ、その意味を。
ただしドラファンは「票が盗まれた!」なんて騒がない。そんな幼稚じゃない。Qアノン陰謀論者でも、キリスト教福音派でも、共和党支持者でもない。最初っから期待もしてない。アメリカのトランプ支持者や極右団体「プラウドボーイズ」も、幼少期からドラファンだったら、連邦議会に乱入することもなく、選挙の残酷さを受け入れられたはずだ。
ドラファンはとっくの昔に知っている。民主主義には欠陥があるってことを。
※『人生で残酷なことはドラゴンズに教えられた』より一部抜粋
【プロフィール】
富坂聰(とみさか・さとし)/1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授、ジャーナリスト。北京大学中文系中退。1994年、『龍の伝人たち』で21世紀国際ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。『中国の地下経済』『中国の論点』『トランプVS習近平』など、中国問題に関する著作多数。物心ついた頃から家族の影響で中日ファンに。還暦を迎え、ドラゴンズに眠る“いじられキャラ”としての潜在的ポテンシャルを伝えるという使命に目覚めた。