ナゴヤドーム(当時)のスタンドで盛り上がる中日ファン(写真は2019年、時事通信フォト)
3年連続最下位からの反転攻勢を目指す中日ドラゴンズについて異色の本が出た。新書『人生で残酷なことはドラゴンズに教えられた』の著者である拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏は、幼少時からの熱烈な中日ファンだ。「日中問題」の専門家である富坂氏が「中日(ファン)問題」について綴るシリーズ第6回のテーマは、中日ファンの“リテラシー”である(シリーズ第6回。第1回から読む)。
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ドラゴンズで「短気」っていえば、やっぱり星野仙一投手の専売特許だ。星野一人でお腹一杯だ。でも、星野は陽キャだから救いがある。それにひきかえ、暗い短気って……。
世の女性は「物静か」を「やさしい」と混同しがちだが、大きな間違いだ。
アライグマもイタチも実は凶暴である。新書『人は見かけが9割』が大ヒットしたのは2005年。中身を読んだことはないが概ね肯定できる。しかし、例外はある。人じゃないけど、ラーテルとかクズリとか、見た目からは想像できない恐ろしさだ。
そういえば、あの手塚治虫の大作『ジャングル大帝』のアニメに登場する哲学者のようなヒヒ、マンディ爺さんがマンドリルなんだと知ったときにも違和感を覚えた。本当のマンドリルは哲学者とは似ても似つかない粗暴さをまとっているからだ。
豆知識だが、動物園ではヒヒやサルに笑いかけるのは避けたほうがよい。理由は「歯を見せるのは威嚇行為」とみなされるからだ。
この知識、じつは実証済みだ。「実践は真理を検証する唯一の基準」(鄧小平)である。「実事求是」だ。私は、いい年齢になってからだが、動物園で実証してみた(まさに実事求是だ)。分厚いガラス越しに対面したマンドリルと目が合うのを待って、大げさに歯を見せてニッと笑ってやったのだ。
するとマンドリル、怒ること怒ること。ガラスに向かって突進してきたのだ。
このときの恥ずかしさ(周囲にはたくさん人がいて、一気に注目を浴びてしまった)と恐怖といったらなかった。いや、ひたすら恐怖だ。もう、自宅まで追い込みかけられるんじゃないかという考えが頭をよぎったほどだった。
マンドリルは哲学者なんかじゃない。そして、高木もおんなじだ。かなり怒りっぽい人だったようだ。