中日ドラゴンズのレジェンド・宇野勝氏(右)と富坂聰氏
新書『人生で残酷なことはドラゴンズに教えられた』が話題の富坂聰氏(拓殖大学海外事情研究所教授)。生粋のドラファンである富坂氏が、プロ野球史上唯一の「遊撃手で本塁打王」の記録を持ち、独特のキャラクターから随一の人気を誇ったレジェンド・宇野勝氏と対談。自身の現役時代のエピソードに加え、3年連続最下位からの復活を期す今シーズンのドラゴンズについて聞いた。(シリーズ第14回。第1回から読む)
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もしもウーやんが、中日ドラゴンズの監督だったら……ドラファンならば一度は頭をかすめたことがあると思う。私はとりわけ宇野ファンだったからなおさらだ。
そんな思いをご本人にぶつけてみたくなった。
待ち合わせ場所に指定されたのは、ウーやんが暮らす名鉄線の某駅だ。駅のロータリーに愛車で現れたウーやんは、こちらが水を向ける前から2025年のドラゴンズについて熱く語り出した(対談日は2024年11月)。
「一樹(井上監督)が選手たちをどう盛り上げてくれるか」
宇野:2025年のドラゴンズ。ワクワクするね。
富坂:いけそうですか?
宇野:いいんじゃないですか? とにかくドラフトが良かった。1位の金丸夢斗投手、2位の吉田聖弥投手。どっちも勝ちが見込めるし、そして3位の森駿太選手。ビデオでしか見てないけれど、あれはひょっとするとひょっとするよ。とにかく一樹(井上監督)が選手たちをどう盛り上げるかでしょ。タマは揃ってるんだから。とくに投手は。後はどう点を取るか。何より選手の気持ちだね。
富坂:気持ち、ですか?
宇野:「いまの時代には合わない」って批判されちゃうんだけど、“戦う野球”っていうかね。その点からすると、最近のドラゴンズの選手たちの野球はちょっと物足りない。ママゴトというか、ガツンとぶつかる感覚を失っている。いまの選手は喜怒哀楽をあんまり表に出さないでしょう。
富坂:そうですね。でも、福永(裕基)選手はいいんじゃないですか?
宇野:ああ、いいねえ。ああいう選手がねえ、点の取れるチームになるカギを握っている。それと東邦高校から入った4番候補の(石川)昂弥ね。彼が育たないとダメだ。
富坂:石川選手は、闘志という意味では、あまり強く感じませんね。
宇野:いや、それも育て方次第じゃないの?
富坂:そういえば宇野さんもあまり表に出すタイプじゃなかったですよね。
宇野:ああ、モノに当たったりというのはなかったね。
富坂:宇野さんはホームランバッターだったのに、スリムでしたよね。とくに下半身が。
宇野:僕は当時、背は181センチあったんだけど、体重は70キロ台だったからね。
富坂:やたらとバットスイングが速かった印象です。
宇野:(満足そうに)あー、そうだね。メジャーリーガーが来日したとき、試合後にスイングスピードを測ったことがあったんだけど、やっぱり僕のほうが速かったよ。
富坂:やっぱり(笑)。ヤクルトの山田哲人選手が絶好調の頃に、彼のスイングがとにかく速いって話題になりました。
宇野:うん、いい名前が出たね。実はね、彼は急に成績が落ちたでしょう。迷っているんじゃないかな。
富坂:と、いいますと?
宇野:振り方の話だけど、球を遠くに飛ばすためには、アッパースイングが理想だって話は最近よく聞くでしょ。メジャーは確かにそうなんだけど、だからダウンスイングがすべてダメって風潮はおかしいんだよ。だって世界の王(貞治)さんはダウンスイングでホームランをあれだけ量産したんだよ。本当にたくさんのバッターが3割を打ってきたし。
富坂:だから、山田選手も迷っていると。
宇野:そう見えるね。頭でっかちになっちゃっているのかもしれない。