星野仙一氏と宇野氏は同僚として、監督と選手として長い付き合いとなった(写真は西武と争った1988年の日本シリーズで本塁打を打ち、星野監督の出迎えを受ける宇野氏。産経新聞社)
宇野:だから、僕は送りバントとかエンドランが嫌い。いざピッチャーと戦おうってときに、パッとサインを見たらエンドランって、“次の球は振らずに当ててゴロを転がせ”ってことでしょ。
富坂:テンションが下がる。
宇野:下がる、下がる。どうしたらドラゴンズの野球に魅力が出るかっていったら、やっぱりそのあたりじゃないのかな。僕は“セオリーって何だよ?”って思うわけ。そういえば高木(守道)監督は送りバントをしなかったね。
富坂:それはイメージからすると意外ですね。打者としての宇野さんもあんまり送りバントはしなかったですよね。
宇野:星野監督時代で覚えているのは、神戸の球場での阪神戦だったかな。ノーアウト一塁、二塁の場面、5番打者の僕にバントのサインが出て、「あれ?」って。見返したんだけど、やっぱりバントのサインでガッカリしてね。それで送りバントはやるにはやったけど、2回ともファールになって。
富坂:それでサインはバッティングに切り替わったんですね。
宇野:そう。それで打ったらホームランになっちゃった(笑)。ベンチに返ってきたときに星野さんに頭を小突かれたんだけど、その場面がテレビで何回も使われた。
富坂:バントはわざと失敗したんですか?
宇野:わざとじゃないよ! けれど、真剣じゃなかった。ただ、その数日後に星野さんから「お前はバントだけ練習してろ!」って言われて、ずっとバント練習してたことがあった。
富坂:スラッガーの宇野さんが、ずっとバントですか。
宇野:そう。僕もムキになってね。そうしたら星野さんが「おい宇野、バッティング練習はどうした?」って。それでも「いらないっすよ。バントだけって言ったじゃないですか」って、守備練習にも参加しなかった。でも、その日の試合ではヒット3本も打ってるんだよね(笑)。
富坂:宇野さんらしいエピソードですが、宇野さんはゲン担ぎとかしてました?
宇野:ないね(と即答)。
富坂:バッターボックスに入る前に必ずこうするとか。
宇野:それもないな(やはり即答)。
富坂:試合にユニフォーム忘れてくるくらいですもんね(笑)。コーチのユニフォームを借りて出場していたのを覚えていますよ。
宇野:あった、あった! でも、その日もホームラン打ったんだよ(笑)。それにしても、田尾(安志)さんとかだってユニフォームを忘れたことはあったのに、なぜか僕ばかり話題になっちゃうんだよね。
富坂:“ヘディング事件”と同じパターンです。広島の山本浩二さんだってやっているのに……(シリーズ第8回を参照)。