ミャンマーの詐欺拠点で保護されたインドネシア国民を空港で出迎えるインドネシアのスギオノ外相(中央)。解放されたインドネシア国民は500人以上と言われる(AFP=時事)
少し前、SNSで話題になり、ごく一部のマスコミが報道するにとどまったため、あまり注目されなかった事実があると男性は続ける。
「日本の反社がカンボジアなどに集まり、日本人が働かされている詐欺拠点の運営に関与している、と昔から噂以上の高い確度で出回っている話があります。事実、詐欺拠点が現地当局に相次いで摘発された時、拠点に毎日、数百人分の弁当を届けていた日本人経営の和食店が夜逃げしたんです。店のオーナーは日本国内の“反社”出身と言われており、現地国の政府高官が店を訪れていたこともあった。SNS上では、中国詐欺集団に日本人の反社勢力が加担していると指摘されています」(東南アジア在住の日本人男性)
彼が言う「反社」とは、世界で共通語になってしまった「ヤクザ」、暴力団に所属する構成員だけを指すのではなく、準暴力団と呼ばれるようになった「半グレ」なども含む反社会的勢力、犯罪で金儲けをする人たちすべてのことを言う。同様の話は、現地に派遣された日本マスコミの記者も把握しているようだ。前出の大手紙社会部記者がいう。
「もともと、東南アジアの新興国には中国マネーが”投資”名目で大量に投下されました。特にカンボジアやラオス、ミャンマーには、中国マネーによる”経済特区”のような街が新規に造成された。しかし、中国では不動産バブルの崩壊に端を発した不況が始まり、こうした街から金も人材も引き上げられた。そうして閑散としている街に、中国系の詐欺集団が大挙して押し寄せ、拠点化していったという流れです。現地国の高官に賄賂を渡すなどして当局が何もしない状況が何年も続き、拠点はどんどん肥大化、そこで日本など各国から騙されて連れてこられた外国人が、詐欺などの強制労働に従事させられているのです」(大手紙社会部記者)
筆者は以前、借金をしていた人物に言われて中国本土にわたり、持ち物を全て奪われた挙句、脅されながら「日本向け」の特殊詐欺を行っていたという男性にインタビューしている。その記事では触れなかったが、当時は中国国内で中国人をターゲットにしたオレオレ詐欺などの「特殊詐欺」が多発し、中国当局による大規模な捕物が相次いでいた。中国で特殊詐欺に加わった体験を話してくれた男性は、その捕物によって身柄を拘束され、日本に強制送還されたのだったが、もし、あのまま中国にいれば「殺されていたかもしれない」と彼は話していた。だから「逮捕されてよかった」と安堵したのが印象的だった。そして、「賄賂」が飛び交っていた様子も見たと語っていた。